1.経営所得安定対策等の概要
農林水産省では「経営所得安定対策」として、担い手農業者の農業経営の安定に資するよう、諸外国との生産
条件の格差から生ずる不利を補正する交付金(ゲタ対策)と、農業経営のセーフティネットとして、当年産の収入が減少した場合に、その減少額を補てんする交付金(ナラシ対策)があります。
1-1.畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)
ゲタ対策とは、 諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物の生産 ・ 販売を行う農業者に対して 、 「標準的な生産費」と「 標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付する制度です 。
交付金の支払いは生産量と品質に応じて交付する数量払を基本とし、 当年産の作付面積に応じて交付する面積払は数量払の先払いとして支払われます 。
支援の対象となる農業者は、 認定農業者 、 集落営農 、 認定新規就農者です。
1-2.米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ)対策
米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)とは、農家拠出を伴う経営に着目したセーフティネットであり、米及び畑作物の農業収入全体の減少による影響を緩和するための制度です。
交付対象者は、認定農業者、集落営農、認定新規就農者です。
1-3.米政策と戦略作物の生産・流通に対する助成
米の1人当たりの年間消費量は、1962年度の118.3kgをピークに、その後減少を続け、2020年度は50.8kgにまで減少しています。
こうした中で、経営感覚あふれる農業者により、消費者ニーズにきめ細かく対応した米生産が行われるとともに、食料自給率・食料自給力の向上等を図る観点から、水田をフル活用し、需要のある麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の戦略作物や野菜、果樹等の高収益作物等への転換が進められることが重要だとされています。
国では、2018年から、行政による生産数量目標の配分を廃止し、産地・生産者が中心となって需要に応じた生産・販売を行う米政策へと見直しを行い、その定着に向けて推進を行っています。
需要に即した、麦・大豆生産の確保、耕畜連携による稲発酵粗飼料等の飼料作物の拡大・定着、加工用米等の多様な米需要に対応した生産の推進を図るため、麦、大豆、米粉用米等の戦略作物の本作化や水田の畑地化を推進する水田活用の直接支払交付金等を措置しています。
なお、新規需要米とは、以下の米穀または稲をいいます。
(1) 飼料用
農林水産省「需要に応じた米の生産・販売の推進に関する要領」、別紙「新規需要米について」(令和5年3月31日改正)
(2) 米粉用(米以外の穀物代替となるパン・麺等の用途)
(3) 稲発酵粗飼料用稲(以下「WCS用稲」という。)
(4) 青刈り稲・わら専用稲(飼料作物として用いられるものに限る。)
(5) 新市場開拓用((1) 、(2) を除く、内外の米の新市場の開拓を図ると判断される用途に供される米穀。輸出用日本酒の原料に供するものに限り、醸造用玄米を含む。)
2.交付金申請の手続き
農業経営を承継後、承継者が経営所得安定対策等の交付金を受けようとする場合は、交付金の申請を行います。令和5年度の場合を例にとって説明すると、生産年の4月1日から6月30日までの間に、地域農業再生協議会(市町村、JA等)または地方農政局、県域拠点等に申請します。
「米・畑作物の収入減少緩和対策(ナラシ対策)」に加入する場合は、同時期までに加入申請(積立申請)を行った上で、同年7月31日までに積立金を拠出し、生産年の翌年4月1日~5月1日までに、補てん金の交付申請を行います。
また、加工用米や飼料料米等の新規需要米に取り組む場合は、あらかじめ需要者と販売契約等を締結したうえで、6月30日までに取組計画を提出し、認定を受けることで、交付金の対象となります。
令和4年産から、ナラシ対策の運用が見直され、農業者が事前に集出荷業者(JA等)と出荷契約を結んだもの等がナラシの補てん対象の要件となりました。
ただし、農協等との数量ゼロの出荷・販売契約や、販売計画を立てずに実需者に販売し、ナラシ対策の交付申請を行う事例については、令和5年産以降の取り扱いが見直されます。
さらに、令和5年10月からインボイス制度が開始されることを受けて、令和5年産から交付単価が免税事業者向け単価と課税事業者向け単価に分かれます。
免税事業者向け単価を申請する場合は、令和5年度の交付申請から、原則として2年前の確定申告書等の提出が必要になりました。開業開始2年以内の承継者の場合、個人事業の開業・廃業等届出書等を提出します。
なお、交付金の制度や手続き方法は、毎年のように変更があるため、各年度の要綱や窓口で十分確認してください。
区分 | 書類名 ー添付書類等 | 提出期限 | 様式 | 電子申請 |
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共通 | 様式第1号 経営所得安定対策等交付金交付申請書 | 生産年の4月1日 ~6月30日 | ▶ | 〇 |
様式第2号 水稲生産実施計画書兼営農計画書 | 〇 | |||
様式第3号 経営所得安定対策等交付金振込口座届出書 | 〇 | |||
畑作物の直接支払交付金 (ゲタ) | 様式第9-1 畑作物の直接支払交付金における数量払の交付申請書 | 生産年の7月1日~翌年3月5日(大豆・そばは、翌年4月30日) | ▶ | 〇 |
ー個人事業の開業・廃業等届出書(写し) | ||||
様式第9-2 畑作物の直接支払交付金に係る自家加工販売(直売所等での販売)計画書兼出荷・販売等実績報告書 | 生産年の4月1日~翌年6月30日 | 〇 | ||
米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ) | 様式第10-1 収入減少影響緩和交付金の交付申請書 | 生産年の4月1日 ~翌年5月1日 | ▶ | 〇 |
様式第10-11号 収入減少影響緩和交付金の積立て申出に係る米穀の出荷・販売契約数量等報告書 | 生産年の4月1日~6月30日 | 〇 | ||
水田活用の直接支払交付金 | 様式第11号の1 水田活用の直接支払交付金の対象作物に係る出荷・販売等実績報告書兼誓約書 | 生産年の12月20日までに | ▶ | 〇 |
様式第11号の2 水田活用の直接支払交付金における飼料用米、米粉用米の数量報告書 | 生産年の翌年1月31日までに | 〇 | ||
参考様式3 水田活用の直接支払交付金の対象作物に係る自家加工販売(直売所等での販売)実績報告書 | 生産年の12月20日までに | 〇 | ||
参考様式4-1 畑地化支援に係る取組の要件確認申請書 | 生産年の5月31日までに | 〇 | ||
参考様式4-3 飼料作物(牧草)に係るは種実施報告書 | 〇 | |||
加工用米及び新規需要米の申請 | 別紙様式第3-2号 加工用米の取組計画認定申請書 | 生産年の6月30日まで | ▶ | |
ー販売計画書の写し | ||||
ー別紙様式3-6号 加工用米需要団体等の原料米の仕入状況等 | ||||
ー別紙様式3-18号 加工用米の適正流通に関する誓約書 | ||||
新規需要米取組計画書 | ||||
販売契約書の写し | ||||
別紙様式4-5号の1 新規需要米の適正出荷に関する誓約書 | ||||
別紙様式4-5号の2 新規需要米の適正流通に関する誓約書 |
◆様式掲載サイト:農林水産省 > 農産 > 経営所得安定対策 > 申請様式ダウンロード
◆様式掲載サイト:農林水産省 > 政策統括官 > 米(稲)・麦・大豆 > 米政策関連
◇電子申請:農林水産省共通申請サービス(全ての地域農業再生協議会において電子申請が可能ではないため、最寄りの協議会に問い合わせる必要がある)
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