組合員が亡くなられて、相続を機に農業後継者に経営承継する場合で、すでに農業後継者が就農しているケースと、その時点ではまだ就農しておらず、相続発生後に就農するケースについて、経営承継の流れと手続きを整理します。
被相続人の死亡や廃業の手続きの後、速やかに、すでに就農済みの場合は相続人が経営主として(3)事業を開始し、未就農の場合は後継者を確定し、就農と事業開始の手続きをとります。
と同時に農業経営に係る(4)名義を変更します。
被相続人が相続税の納税猶予の適用を受けていた場合、その死亡は猶予されていた相続税と利子税の免除事由に該当することから、遅滞なく税務署に相続税の免除を届出ます。
被相続人の死亡に伴い資格を喪失するため、「国民健康保険喪失届」を死亡から14日以内に市町村に提出します。
(3)農業後継者の事業の開始
①就農済み農業後継者
相続人である農業後継者が、すでに就農済みである場合は、継続的に農業経営を承継することが出来ると思われるため、速やかに事業の開始届、認定農業者の申請を行います。
従業員がいる場合は、その労務手続きも速やかに行います。
相続人である農業後継者が認定農業者となっていない場合は、なるべく早く認定農業者の申請を行います。
区分 | 書類名 ー添付書類等 | 提出期限 | 提出先 | 様式 | 電子申請 |
---|---|---|---|---|---|
相続人の事業の開始 | 個人事業の開業・廃業等届出書 | 1ヵ月以内 | 税務署 | ▶ | 〇 |
給与支払事務所等の開設・廃止届 | ▶ | 〇 | |||
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | ー | ▶ | 〇 | ||
所得税の青色申告承認申請書 | その年の 3月15日 or 2ヶ月以内 | ▶ | 〇 | ||
青色専従者給与に関する届出・変更届出書 | ▶ | 〇 | |||
ー給与規定 |
◇電子申請:国税電子申告・納税システム「e-Tax」
従業員の労務手続き
「1-1.農業後継者(子弟)への承継」と同じ。
認定農業者の申請
「1-1.農業後継者(子弟)への承継」と同じ。
②未就農農業後継者
相続人である後継者が、相続発生時にまだ就農していない場合は、一定の空白期間が生じてしまうことも想定されます。特に被相続人が急逝した場合は、相続人側に農業を継ぐ準備が出来ていないことも考えられるので、速やかに農業後継者を確定し、就農するための準備にとりかからないとなりません。
就農していないということは、サラリーマン等として勤務していることが想定され、その会社等を退職し、新たに就農することとなるため、社会保険関係の手続きをとる必要があります。
新規就農するにあたり、認定新規就農者の申請、事業の開始届の手続きをとります。
また、被相続人が雇用していた従業員がおり、農業後継者の経営においても雇用する場合は、なるべく速やかに従業員の労務手続きをとる必要があります。
区分 | 書類名 ー添付書類等 | 提出期限 | 提出先 | 様式 |
---|---|---|---|---|
国民健康保険への切替 | 国民健康保険被保険者資格取得届 | 14日以内 | 市町村 | |
ーこれまでの健康保険の喪失日が確認できる書類 | ||||
農業者年金の加入 | 農業者年金通常加入申込書 | JA | ▶ | |
農業者年金政策支援加入申込書 |
国民健康保険への切替手続き
就農前までサラリーマンであれば、退職と同時にそれまでの健康保険の資格を失い、個人事業者は国民健康保険への切替手続きを、退職から14日以内に、市役所の担当窓口で行わなければなりません。
「国民健康保険被保険者資格取得届」に、これまでの健康保険の喪失日が確認できる書類(資格喪失証明書、離職票等)を添付して提出します。
市町村によって、様式や必要書類は異なりますので、各市町村に確認のうえ書類を用意します。
認定新規就農者の申請
「1-2.第三者への経営移譲」と同じ。
事業の開始届
①就農済み農業後継者と同じ。
■従業員の労務手続き
「1-1.農業後継者(子弟)への経営承継」と同じ。
(4)農業経営に関する名義変更
相続人が農業経営を承継するにあたって、JA、農業共済、その他名義変更を行います。
「1-1.農業後継者(子弟)への経営承継」と同じ。
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