組合員が亡くなられて、相続を機に農業後継者に経営承継する場合で、すでに農業後継者が就農しているケースと、その時点ではまだ就農しておらず、相続発生後に就農するケースについて、経営承継の流れと手続きを整理します。
1ヶ月以内に、(1)被相続人の死亡そのものに関する届出関係を速やかに行い、次に(2)被相続人の事業の廃止について、所得税と消費税について手続きします。
(1)被相続人の死亡に関する手続き
被相続人が死亡したとき、まず「死亡届」を7日以内に市町村に提出します。これに伴って、世帯主の変更、年金、保険等、各種の手続きをとる必要があります。
また、年金や保険では、条件に該当すれば給付を受けられるものがあり、これらは請求しなくては、給付を受けることができなません。
主なものを以下に示していますが、この他にも、被相続人が加入または利用していたものを把握し、速やかに手続きする必要があります。
区分 | 書類名 ー添付書類等 | 提出期限 | 提出先 | 発行場所等 | 様式 |
---|---|---|---|---|---|
死亡届 | 死亡届 | 7日以内 | 市町村 | A | |
ー死亡診断書 | 病院 | ||||
死体火葬許可申請書 | |||||
世帯主の変更 | 雇用保険適用事業所設置届 | 14日以内 | 市町村 | ||
遺言書の検認 | 家事審判申立書 | 遅滞なく | 家庭裁判所 | B | |
ー遺言者の戸籍謄本 | 市町村 | ||||
ー相続人全員の戸籍謄本 | |||||
納税猶予税額の免除 | 贈与税の免除届出書 | 遅滞なく | 税務署 | C | |
相続税の免除届出書 | |||||
事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予の免除届出書 | C | ||||
農業者年金 | 農業者年金死亡関係届出書 | 10日以内 | JA | D | |
ー農業者年金保険者証 | |||||
ー戸籍謄本 | 市町村 | ||||
ー住民票(写し) | |||||
国民年金 | 受給権者死亡届 | 14日以内 | 年金事務所 | E | |
未支給(年金・保険給付)請求書 | 死亡届けと同時 | ||||
ー住民票除票 | 市町村 | ||||
ー戸籍抄本 | |||||
ー死亡診断書(写し) | |||||
ー年金証書 | |||||
国民健康保険 | 国民健康保険喪失届 | 14日以内 | 市町村 | ||
ー国民健康保険保険者証 | |||||
ー死亡を証明するもの | 市町村 | ||||
国民健康保険葬祭費支給申請書 | 2年以内 | ||||
ー国民健康保険保険者証 | |||||
ー葬儀費用の領収書 |
◆様式掲載サイト B:裁判所 > 裁判手続案内 > 申立て等で使う書式 > 家事審判の申立書 > 遺言書の検認の申立書
◆様式掲載サイト C:国税庁 > 税の情報・手続・用紙 > 申告手続・用紙 > 申告・申請・届出等、用紙(手続の案内・様式)> 税務手続の案内(税目別一覧)> 相続・贈与税関係 >[手続名]贈与税又は相続税の納税猶予の免除届出手続
◆様式掲載サイト D:独立行政法人農業者年金基金 > 手続き・届出 > 申請様式 > 新制度:年金を受けている方が亡くなったとき(死亡時の届出関係)
◆様式掲載サイト E:日本年金機構 > 年金制度・手続き > 年金の受給 > 年金の受給に関する届出・手続き > 共通事項 > 年金を受給している方やそのご家族の手続き(共通事項)> 年金を受けている方が亡くなったとき
◇電子申請 F:e-Gov 電子申請
死亡届け等の手続き
被相続人が死亡したら、病院で死亡診断書を記載してもらったうえで、「死亡届」を、「死体火葬許可申請書」と併せて、市町村の戸籍担当部署に提出します。
遺言書の検認
家事審判申立書
遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求します。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等立ち会いのうえ開封しなければなりません。
なお、公正証書遺言については検認は不要です。
納税猶予税額の免除
被相続人が相続税の納税猶予の適用を受けていた場合、その死亡は猶予されていた相続税と利子税の免除事由に該当することから、遅滞なく税務署に相続税の免除を届出ます。
農業者年金の手続き
死亡一時金、未支給年金を請求するとき(保険料納付済期間が3年以上で、遺族は死亡の当時、生計を同じくしていた者であるなどの要件がある)は、農業者年金死亡関係届出書を提出します。
国民年金の手続き
国民年金を受給していた場合
被相続人の死亡に伴い、国民年金の受給停止となるため、「年金受給者死亡届」を、年金受給者が死亡後14日以内に、年金事務所に提出します。
未支給の年金がある場合は、年金受給者死亡届と併せて、「未支給(年金・保険給付)請求書」を提出します。
国民年金に加入していた場合
国民年金の保険料を3年以上納め、老齢基礎年金、障害基礎年金の両方とも受け取らないまま死亡した場合に、遺族礎年金、寡婦年金、死亡一時金の受給資格がある場合には、それらを請求することが出来る。
国民健康保険の手続き
被相続人の死亡に伴い資格を喪失するため、「国民健康保険喪失届」を死亡から14日以内に市町村に提出します。
(2)被相続人の事業の廃止
被相続人が、死亡までに事業を廃止していない場合は、相続人が代わりに個人事業の廃止届及び個人事業者の死亡届出書を税務署に提出しなければなりません。
区分 | 書類名 | 提出期限 | 提出先 | 様式 | 電子申請 |
---|---|---|---|---|---|
被相続人の事業の廃止 | 個人事業の開業・廃業等届出書 | 1ヵ月以内 | 税務署 | ▶ | 〇 |
青色申告の取りやめ届 | 速やかに | ▶ | 〇 | ||
個人事業者の死亡届出書(消費税) | 速やかに | ▶ | 〇 |
◇電子申請:国税電子申告・納税システム「e-Tax」
個人事業者の死亡届出書(消費税)
(対象者)死亡した課税事業者の相続人
(内容)事業承継者を記載する欄があり、これにより、課税事業者であった被相続人の基準期間の課税売上を引き継ぐことになります。
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