地方圏における生産緑地制度の導入 その必要性とメリット

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生産緑地制度導入の必要性

生産緑地制度は、地方圏(三大都市圏特定市以外の市町村)では、その導入は任意であるため、現在のところ、導入していない市町村が多いのが現状です。

生産緑地制度を導入していない市街化区域農地では、生産緑地を選択できませんので、農家にとって税負担が大きく、営農継続が困難な状況にあります。

持続的な営農継続を可能にし、農あるまちづくりや、JAの組織・経営基盤の維持等においても、生産緑地制度を導入する必要性が非常に高いと言えます。

地方圏(生産緑地制度未導入)の都市農地の課題

農家にとって営農継続が困難な状況

  • 生産緑地を選択できず、固定資産税・都市計画税が実質宅地並み課税と重く、農業収益を圧迫
  • 貸したら返って来ない、相続税納税猶予が適用されない等の問題から、農地の貸借が難しい

営農環境や居住環境の悪化

  • 農地の宅地化や遊休地が増え、維持管理も困難となり、営農環境が悪化する
  • 営農断念による遊休地化や低・未利用地が増え、居住環境が悪化する

地方圏の生産緑地制度導入によるメリット

市街化区域での持続的な営農継続を可能に

  • 固定資産税・都市計画税が農地課税となり大幅に負担が軽減、農業収益が向上し、持続的な営農継続が可能に
  • 都市農地貸借円滑化法を活用して生産緑地を貸借可能、貸しても相続税納税猶予が継続

農あるまちづくりにつながる

  • 市街地内の農地を計画的に保全し、農あるまちづくりを進める
  • 市民農園や体験型農園等に農地を活用し、非農家住民の農とのふれあいの機会を増やす

三大都市圏特定市との違い

  • 制度導入の可否は、各自治体が判断する
  • 生産緑地以外の市街化区域農地の固定資産税等の課税方法は、農地に準じた課税のまま。
  • 生産緑地以外の市街化区域でも、相続税納税猶予の適用を受けることができ、20年で営農が免除される(生産緑地は、三大都市圏と同様に終身営農となる)

市街化区域農地の減少と固定資産税の上昇

地方圏ではいまだ一部の市町村でしか生産緑地が導入されていないため、市街化区域農地は、実質宅地並みの重い固定資産税及び都市計画税の負担を強いられています。

「農地に準じた課税」という、負担調整措置によって宅地並み課税に近づけていく仕組みによって、実質宅地並み課税と言える水準にすでに達し、全国平均で10aあたり約6万円、10万円を超えるところも多いのが現状です。

固定資産税等の負担や相続時の売却もあって、地方圏の市街化区域農地は、2005年と比べて4割以上も減少してしまいました。

(注)固定資産税は、標準税率1.4%とした計算値。(資料)総務省「固定資産の価格等の概要調書」、各年1月1日現在。

地方圏における生産緑地制度の導入状況

地方圏においても、全国の15市町で生産緑地制度が導入され、2021年度末現在で約130haの生産緑地地区が指定されています。

地方圏の市街化区域農地の固定資産税は、農地に準じた課税であるが、負担調整措置により毎年税負担が増したことから、地価の高い都市等で制度導入の動きが見られます。

さらに、福岡県久留米市や栃木県宇都宮市、岐阜県岐阜市でも、制度が導入され、指定に向けた手続き等が進められています。

《地方圏の生産緑地制度導入市町村一覧》

導入年府県市町村面積地区数市街化区域農地面積
1993年石川県金沢市0.1ha1390.3ha
愛知県大口町1.5ha714.5ha
1995年大阪府千早赤阪村0.3ha116.5ha
1998年福岡県福岡市2.5ha11229.4ha
2001年宮崎県門川町2.1ha137.4ha
2003年長野県長野市3.2ha9346.2ha
2006年茨城県五霞町7.4ha105.9ha
和歌山県和歌山市81.6ha287494.6ha
2010年茨城県常陸太田市7.5ha975.9ha
2013年京都府大山崎町6.8ha3213.9ha
2019年大阪府島本町2.1ha2118.1ha
高知県高知市7.9ha51232.7ha
2020年広島県広島市5.8ha32735.0ha
2021年福岡県久留米市152.6ha
2022年栃木県宇都宮市(1.1ha)(4)441.5ha
岐阜県岐阜市(2.5ha)(18)978.7ha
合計128.8ha472
(資料)生産緑地は、国土交通省「都市計画現況調査」2021年3月31日現在。2022年度に新たに生産緑地制度が導入された宇都宮市及び岐阜市についてのみ、直近の2022年12月末現在のものを参考として記載したが、合計には加えていない。
市街化区域農地は、総務省「固定資産の価格等の概要調書」2021年1月1日現在。生産緑地は含まない。
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