体験型農園の施設等の設置、農地転用等の手続き

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体験型農園施設

体験型農園に伴う施設としては、農具倉庫、休憩施設、講習施設、トイレ、駐車場等がありますが、これらを設置する行為が、農地転用および開発行為、建築行為に該当するものは、以下に列挙する1~3の関係法令の許可や届出等の手続きが必要となります。

なお、許可が必要なものについて、許可要件を満たすと思われるものであっても、個別に判断されるため、必ず認められるとは限らないことや、許可不要とされるものについても、市区町村によっては届出等が求められることもあります。

許可を受けて施設の設置が可能だとしても、過剰な建設コストや分筆登記費用、あるいは農地転用によって相続税納税猶予の対象から外れるといったことにも注意が必要です。

目次

1.農地法による転用許可

農地において施設等を設置する、すなわち農地転用するには、原則として農地法第4条又は第5条の都道府県知事等の許可が必要となります。

市街化区域内の農地は、農業委員会に届け出ることで転用が可能です。

農業者が所有地に200m²未満の自らが生産する農作物のための農業用施設を設置する場合は、許可不要とされています。
体験型農園についても、農業者が所有地に設置する体験型農園の施設や駐車場のための農地転用は、200m²未満であれば許可不要と考えらます。
ただし、市区町村によっては判断が異なる場合や、農業委員会への届出が必要とされる場合もあり、個別に確認した方がよいでしょう。

(1) 農地転用許可基準

市街化区域内を除く農地転用については、農地転用許可基準一般基準立地基準により転用許可の可否が判断さます。
一般基準については、農地の転用の確実性や周辺農地の営農条件等への支障を及ぼすおそれ等が審査されます。

立地基準については、農地の優良性や周辺の土地利用状況等からみた5つの農地区分に応じた方針に基づき許可の可否が判断されます。

農用地区域内農地を除く4つの農地区分は、あらかじめ区分されているものではなく、申請を受けて農地転用の可否を審査する際にいずれの農地区分に該当するか判断されます。
方針にある例外許可とは、例外的に許可できるものであって、許可されない場合もあります。

《農地転用許可基準の立地基準》

農地区分農地等条件許可の方針
農用地区域内農地農業振興地域整備計画において農用地区域と定められている農地原則不許可
甲種農地市街化調整区域内の特に良好な営農条件を備えた農地等原則不許可
例外許可として、農業用施設や都市住民の農業体験のために設置される施設等(施行規則第33条1項)
第1種農地特に良好な営農条件を備えた農地等(10ha以上の一団の農地、土地改良事業の施行区域内等)
第2種農地市街化が見込まれる農地等代替地が無い場合に許可可能
第3種農地市街化傾向が著しい農地等原則許可

2.都市計画法及び建築基準法の手続き

(1) 市街化区域と市街化調整区域

市街化区域においては、用途地域に応じた用途に適合した建築物の建築が可能であり、建築物に該当するものを建築しようとするときは、原則として建築確認申請し、建築基準法に適合しているかの審査が必要となります。
ただし、住居専用の用途地域(第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域)では、住宅以外の単独の建築物の建築には許可が必要です。

市街化調整区域においては、都市計画法によって建築等の行為が制限されており、建築物を建築しようとするときは、原則として都道府県知事の許可が必要となります。

許可が不要なものとして、“農業の用に供する建築物”つまり、農業用施設については建築可能であり、体験型農園における農機具収納庫等はこれに該当します。
ただし、特定農地貸付による農園の場合は、同様の施設であっても農業用施設とは見なされず、許可が必要となることに注意してください。

市街化調整区域における建築等行為は、許可を受けることが困難な場合も少なくありません。上記の農地転用と併せて許可を受けることが困難な場合、市民農園整備促進法という市民農園施設を設置できる方法があります。

(2) 建築物に該当しないもの

建築物に該当しないものは、建築許可や建築確認申請は不要。建築物とは、建築基準法第2条において「屋根及び柱若しくは壁を有するもの(以下省略)」と規定されており、体験型農園に設置する施設もこの定義において建築物に該当します。

ただし、容易に移動や取り外しが可能なものは建築物に該当しないとされており、移動可能な仮設トイレや、ビニールが容易に脱着可能な園芸用のビニールハウス(パイプハウス)、取り外しが容易な休憩施設は、建築物に該当しないとされています。

なお、農産物の生産に供さないビニールハウスや、移動できないよう固定した東屋やトイレは建築物と見なされる可能性があることに注意してください。

(3) 建築物に該当するが、許可不要または許可されるもの

建築物の中で例外として、農業用施設や農業経営に必要な建築物で建築面積が90m²以内のものは、許可不要とされており、許可不要な建築物に該当しない場合であっても、農業経営に必要な施設は許可される可能性は高い。

よって、農業者が農業経営の一環として体験型農園の付帯施設(建築物に該当するもの)を設置する場合は、許可不要または許可される可能性が高いと言えます。

一方で、農業経営を行わないJAが農園施設を設置しようとするときは、これに該当しないため、併せて市民農園整備促進法の活用も検討する必要があります。詳しくは、法令の確認および自治体の開発許可担当部局に確認してください。

3.生産緑地法の行為制限

生産緑地は農地以外の利用等の行為が制限されますが、市民農園の付帯施設についは市長の許可を受けて設置が可能(原則許可)とされています(生産緑地施行令第5条)。

▶生産緑地制度の仕組み「生産緑地にかかる行為制限」

駐車場についても、市民農園施設(休憩施設や講習施設、管理施設)に付帯する施設として、許可を受けて整備できます(都市計画運用指針)。

《生産緑地で設置が可能な施設(体験型農園関連)》




【1号施設】
農林漁業を営むために必要なもの
(法第8条2項1号)
(都市計画運用指針)
●生産又は集荷の用に供する施設
 ;ビニールハウス 等
●生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設
 ;農機具の収納施設 等
●農林漁業に従事する者(市民農園利用者を含む)の休憩施設
 ;休憩所、トイレ 等
【2号施設】
農林漁業の安定的な継続に資するもの
(法第8条2項2号)
●製造・加工所
●直売所
●農家レストラン
【3号施設】
市民農園として農地の保全・利用に必要なもの
(法第8条2項3号)
(施行令5条)
(都市計画運用指針)
●農作業の講習の用に供する施設
●管理事務所その他の管理施設
●専ら市民農園利用者が利用する駐車場(1号施設の●休憩施設又は3号施設に附帯する施設として)



通常の管理行為、軽易な行為等
(法第8条9項)
(施行令6条)
●建築物以外の工作物の新設又は増改築
 ;仮設の工作物
 ;水道管・下水道渠等地下に設ける工作物
●1号施設又は2号施設の新築又は増改築で、床面積又は築造面積が90㎡以下のもの
●幅員2m以下の用排水路又は農道等の設置

4.都市計画・農業振興地域の区分による必要な手続き

農地の転用や施設等の建築にあたっては、農園の立地が、都市計画においては、都市計画区域、市街化区域、市街化調整区域、生産緑地地区および用途地域、農業振興地域においては農用地区域といったいずれの区域・地区にあるかを確認し、適用される法令に基づく手続きを行う必要があります。

体験型農園の主な立地として、「生産緑地」、「市街化区域(生産緑地を除く)」、「市街化調整区域・農振農用地区域」の3つのパターンごとに、それぞれ施設等を設置する場合の関係法令及び許可・届出等について以下に示しました。

《都市計画・農業振興地域区分》

《生産緑地における施設設置にかかる許可・届出等》


《市街化区域農地(生産緑地を除く)における施設設置にかかる許可・届出等》

《市街化調整区域・農振農用地区域における施設設置にかかる許可・届出等》

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