不動産価格指数に見る住宅価格の動向【2024年7月版】ーマンション価格の高騰はいつまで続く?

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住宅の購入や売却を検討している方、あるいは不動産投資をしようとしている方にとっては、どのタイミングで実行に移すかは非常に大きな関心事かと思います。

国土交通省は毎月、不動産価格指数(住宅)を公表しています。
不動産価格指数(住宅)とは、2010年平均を100として指数化したものです。この不動産価格指数を見れば、2010年を起点としてどれくらい価格が変化したかを見ることができます。

これらの推移を見ると、全般的な傾向としては、「住宅地」と「戸建住宅」がほぼ横ばいであるのに対し、「マンション」だけが大幅な上昇傾向が続いており、マンション価格の高騰が価格指数でも明確となっています。

目次

1.不動産価格指数とは

不動産価格指数とは、不動産価格の動向について、2010年平均を100として指数化したもので、国土交通省が2012年8月から、「住宅」は月次、「商業用不動産」は四半期ごとの指数を公表しています。毎月、取引月から約3ヶ月後に公表され、比較的早い段階で市場の動きを見ることができます。

「住宅」の不動産価格指数については、住宅・マンション等の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別に毎月の不動産価格についていて、指数化の対象は、「住宅地」、「戸建住宅」、「マンション」、及びこれらを総合した「住宅総合」となっています。また、全国、地方ブロック(9ブロック)、都市圏、都府県別(東京都、愛知県、大阪府の3都府県)にも集計がなされています。

なお、公表値は速報値のため、公表後改訂が行われるため、確定値と異なる場合があります。

《不動産価格指数(住宅)の概要》

項目内容備考
対象用途住宅総合●住宅地
●戸建住宅
●マンション(区分所有)※
※主に中古を対象
対象地域●全国
●ブロック別(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄の計9ブロック)
●都市圏別(南関東、名古屋、京阪神)
●都道府県(東京都、愛知県、大阪府)
対象取引民間部門による取引公的主体による取引は除く
算出期間2008年4月~
基準時点2010年1月~12月までの算術平均値を100として基準化
算出頻度月次
推計方法ヘドニック法(時間ダミー変数法)
季節調節方法X-12-ARIMA 季節調整法
利用する情報不動産取引価格情報アンケート調査による情報
取引月から公表までの期間約3ヶ月公表後3ヶ月間は改訂を行う
公表頻度毎月
(出典)国土交通省 不動産・建設経済局「不動産価格指数(住宅)の作成方法」

2.全国の不動産価格指数(住宅)の推移

2023年7月分における全国の不動産価格指数の「住宅総合」(季節調整済値)は、前月比0.4%下落、前年同月比2.5%上昇して137.8となった。

バブル崩壊以降下落を続けた地価は、10年以上が経過した2004年頃に底を打ち、その後上昇に転じる動きが見られましたが、2008年にはリーマンショックが起きて、再び下落に転じ、その後住宅地や戸建住宅の価格は長く横ばいを続けます。

不動産価格指数は2008年4月から始まり、下のグラフでも下落傾向が見られますが、これはリーマンショックの影響によるものです。

不動産価格指数の住宅の各指標を見ると、2012年末頃まではいずれも概ね横ばいでしたが、2013年に入ると景気が回復基調となり、さらに震災後の復興需要等による建築費の高騰等の影響を受けて「マンション」の価格が上昇を始め、その後も東京オリンピックやコロナ禍を経てさらに上昇傾向が強まり、2024年5月にその指数は2010年の2倍の水準に達し、2024年7月にはさらに上昇し202.2となっています。

その一方で、「住宅地」及び「戸建住宅」は、2013年以降も小幅の上下動を繰り返しながら、全体としては依然として横ばいを続けてました。
ところが、2020年頃から上昇傾向となり、2024年7月の指数は住宅地が115.0、戸建住宅が115.6と上昇しています。
対前年同月比をみると、住宅地は1.6%上昇していますが、戸建住宅は0.3%下落となっていて、微増あるいは横ばいとなっています。

マンションについては、都心回帰によって比較的地価の高い立地における供給が増えていることや、マンション用地の地価上昇、建築資材や人件費の上昇による建築費高騰等と相まって、強い上昇傾向となっています。
ただし、戸建住宅や住宅地と比べると、マンション価格の上昇は、異常と思えるほど突出しています。

《全国の不動産価格指数(住宅)の推移 -2008年4月~2024年7月

全国の不動産価格指数(住宅)の推移
(資料)国土交通省「不動産価格指数(住宅)」(令和5年5月)を基に作成。

3.都市圏別不動産価格指数(住宅)の推移

都市圏別に、2008年以降の15年間の住宅に関する不動産価格指数の推移と、直近の2023年6月の価格指数を以下のとおり整理しています。

《都市圏別不動産価格指数(住宅)2023年7月》

全国南関東圏名古屋圏京阪神圏
住宅総合137.8150.0117.1143.2
2.5%4.3%▲1.8%2.3%
住宅地115.0128.498.2118.1
1.6%0.8%▲5.4%▲4.3%
戸建住宅115.6122.8111.8121.5
▲0.3%2.0%▲0.5%2.4%
マンション
(区分所有)
202.2196.3190.1203.8
5.9%6.4%1.3%6.2%
(注)下段は対前月比

各都市圏に含まれる都道府県

  • 南関東圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県
  • 名古屋圏:愛知県、岐阜県、三重県
  • 京阪神圏:大阪府、京都府、兵庫県

住宅総合の価格指数の推移

都市圏別に「住宅総合」の価格指数の推移を見ると、いずれの都市圏でも2012年末頃までは概ね横ばいでしたが、2013年に入ると景気が回復基調となり、さらに震災後の復興需要等による建築費の高騰等の影響を受けて、主に南関東圏と京阪神圏で価格が上昇を始め、その後も東京オリンピックやコロナ禍を経てさらに上昇傾向が強まり、2024年6月に京阪神圏で145.3、7月に南関東圏で150.0と最高値を更新しました。

名古屋圏では、2017年頃から徐々に上昇傾向となり、他の都市圏と比べると緩やかな上昇傾向を継続し、2023年7月には120.5と最高値を更新しましたが、それ以降は120をやや下回って横ばいとなっています。

《都市圏別不動産価格指数(住宅総合)の推移 -2008年4月~2024年7月》

都市圏別不動産価格指数(住宅総合)の推移

住宅地の価格指数の推移

都市圏別に「住宅地」の価格指数の推移を見ると、いずれの都市圏でも2012年末頃までは概ね横ばいでしたが、2017年に入ると南関東圏や京阪神圏では105前後のやや上昇した状態がしばらく継続し、さらにコロナ禍を経て上昇傾向が強まり、2024年5月の南関東圏の価格指数は130.8で最高指数を更新しました。

京阪神圏は、南関東圏と同様に高い上昇率で推移し、2023年10月の価格指数は125.3と最高指数を更新しましたが、その後はやや下落傾向にあります。

名古屋圏では、小刻みな変動を繰り返ししつつ、価格指数が100をやや下回る状況が続いています。2024年7月は98.2となっています。

《都市圏別不動産価格指数(住宅地)-2008年4月~2024年7月》

戸建住宅の価格指数の推移

都市圏別に「戸建住宅」の価格指数の推移を見ると、いずれの都市圏でも2015年末頃までは100をやや下回る指数で概ね横ばいが続いていましたが、2016年に入ると100を超えて上昇傾向となり、2019になると今度は下落傾向に転じました。

2020年半ば頃、コロナ禍においていずれの都市圏でも底を打って上昇傾向に転じ、特に南関東圏と京阪神圏ではその後高い上昇率を継続し、京阪神圏は2024年4月に127.2と最高指数となりました。2024年7月はやや佐賀って121.5となっています。

南関東圏は2024年6月には124.5と最高指数を更新し、7月には若干下がりましたが、122.8で三大都市圏では最も高い指数となっています。

名古屋圏では、他の都市圏と同様に2020年半ば頃に上昇に転じ、2022年に入ると上昇傾向は鈍化していましたが、2024年7月は111.8となっています。

《都市圏別不動産価格指数(戸建住宅)-2008年4月~2024年7月》

都市圏別不動産価格指数(戸建住宅)

マンションの価格指数の推移

都市圏別に「マンション」の価格指数の推移を見ると、いずれの都市圏でも2012年末頃までは100前後の指数で概ね横ばいが続いていましたが、2013年頃から上昇を始め、その後も高い上昇率を継続し、コロナ禍においてもかえって上昇傾向が強まり現在に至っています。

三大都市圏の中では、2017年以降、京阪神圏と名古屋圏がともに高い上昇率を維持する一方で、南関東圏は上昇率が鈍化し若干の差がつきましたが、2020年後半以降は南関東圏も再び高い上昇率を回復し、直近約1年間は三大都市圏ほぼ同様の高い上昇傾向となっています。

京阪神圏が2023年3月に2001.3と200を超え、7月時点でも203.8と三大都市圏の中で最も高い値となっています。次いで南関東圏が196.3、名古屋圏が190.1と、いずれも200前後の高い水準で上昇傾向を維持しています。

《都市圏別不動産価格指数(マンション)-2008年4月~2024年7月》

都市圏別不動産価格指数(マンション)

4.不動産価格指数に見る今後の住宅価格の見通し

不動産価格指数の主な変動要因

今後の不動産価格を見通すにあたって、その変動要因として主に次の要素が挙げられます。

まず、物価の上昇やインフレの継続により、不動産価格の上昇が今後も続く可能性があります。
2024年9月の消費者物価指数は、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数が前年同月比2.5%上昇し、5ヶ月ぶりに伸び率が縮小したものの、2~3%程度のインフレが継続しています。

また、低金利政策や海外からの投資が続くことで、不動産市場が活況となり、価格が上昇する傾向が続いています。マイナス金利が解除されるなど、“異次元”と言われるほどの金融緩和は終わりを告げましたが、海外と比べれば依然として低金利政策が継続されており、今のところ海外からの投資も活況が当面続くと見る向きが多いようです。

併せて、建築関係の人材不足による人件費の上昇や、建築資材の高騰によって、建築コストが高騰しており、住宅価格、特に鉄筋コンクリート造のマンション価格の高騰につながっています。

ただし、地域格差は広がる傾向にあります。大都市中心部等ではさらに地価の上昇が見られる一方で、人口減少の加速等によって、地域経済の活力が失われ、地価の下落が見られるところもあります。しかも、大都市圏内でも地価上昇は中心部等の一部エリアに限られ、そこに投資や人口がさらに集中し、郊外部等のその他のエリアは地盤沈下していく傾向も見られます。

日本全体で少子高齢化が進行し、都市部においても本格的な人口減少期に突入しています。出生率の回復も見られない中で、成長都市でも出生率は低く、全体のパイが縮小する中で、一部の成長都市に流入人口の増加が偏在する状況にあります。

つまり、投資やインフレによって、今のところ不動産価格は上昇傾向が続いていますが、一方で都市部においても人口減少が始まっている現状を踏まえると、いつ下落してもおかしくない状況が常に潜んでいるとも言えます。

中国での不動産バブル崩壊の日本への影響

最近の大きなトピックスとしては、中国の不動産バブルの崩壊が挙げられます。

その象徴として、経営再建中の中国不動産大手「中国恒大集団」が7月17日、ニューヨークで破産申請したことは、大きな話題となっています。
これは、恒大集団に限った話ではなく、中国の不動産市場全般にわたって、価格下落等の深刻な不況が鮮明になっています。

このことによる、日本の不動産価格への影響についてですが、中国と日本の状況が異なることから、日本でも連鎖的にバブルが始めるとは考え難いでしょう。しかし、間接的に、海外投資家からの日本の不動産に対する評価に変化が現れると考えられることや、不動産バブル崩壊が中国経済全体を大きく低下させることになると、経済的な繋がりの大きい日本経済にもマイナスの影響が少なくないと予想されます。

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