令和6年地価公示 バブル崩壊以降で最高の上昇率

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国土交通省は3月26日、令和6年1月1日時点の公示地価を発表した。これによると、物価や賃金の上昇に見られるように景気動向が上向きな中で、全国の住宅地、商業地いずれも3年連続で上昇し、三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇基調となっている。

目次

1.全国の動向

住宅地、商業地ともに3年連続で上昇

全国平均の地価の変動率(表1)では、住宅地は2.0%上昇(前年+1.4%)、商業地は3.1%上昇(同+1.8%)と3年連続で上昇となった。全用途でも2.3%上昇となり、バブルが崩壊した平成4年以降以降で最も高い上昇率となった。

変動別地点割合(表2)でも、上昇地点の割合が住宅地では63.1%(同56.3%)、商業地では67.6%(同59.9%)と上昇地点割合が拡大した。

2.大都市圏・地方別の動向

三大都市圏の住宅地は全ての都市圏で3年連続上昇

三大都市圏では、住宅地はいずれの都市圏も3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。商業地は東京圏および名古屋圏で3年連続上昇し、大阪圏は2年連続で上昇となった(表1、図1、図2)。

東京圏の住宅地は3.4%上昇(前年+2.1%)、商業地は5.6%上昇(同+3.0%)といずれも3年連続で上昇し、三大都市圏の中で住宅地、商業地ともに最も上昇率が高い。

大阪圏の住宅地は、1.5%上昇(同+0.7%)、商業地は5.1%上昇(同+2.3%)となり、名古屋圏の住宅地は2.8%上昇(同+2.3%)、商業地は4.3%上昇(同+3.4%)といずれも3年連続で上昇した。

地方圏の住宅地は3年連続上昇、地方四市は高い上昇率を継続

地方圏の住宅地は前年と同じ1.2%上昇、商業地は1.5%上昇(前年+1.0%)と、いずれも3年連続上昇となった(表1)。

表 1 圏域別・地方別対前年平均変動率

コロナ禍の影響が大きかった令和3年にも上昇を継続した地方四市は、住宅地が7.0%上昇と依然として高い上昇率ながら前年(+8.6%)に比べると上昇率は縮小したが、商業地は9.2%上昇(同+8.1%)と上昇幅を拡大した。

地方別の住宅地では、昨年に引き続き北海道が4.4%上昇と地方の中では最も高いものの、前年(+7.6%)と比べると縮小した。次いで九州・沖縄地方が2.9%上昇(同+2.2%)と上昇幅を拡大した。

令和6年地価公示住宅地圏域別変動率
令和6年地価公示商業地圏域別変動率

3.都道府県の動向

住宅地の上昇率は沖縄県が4年ぶりに全国1位

都道府県別の変動率は(表2、図3、図4)、住宅地では、沖縄県が5.5%上昇(前年+3.6%)で上昇率を拡大し、4年ぶりに全国1位となった。沖縄県は令和2年まで4年連続で全国1位だったが、コロナ禍の影響を大きく受けて停滞していた。コロナが5類に移行するなど観光を中心に経済活動が回復し、地価も大幅な上昇となった。

2位以降は、福岡県(+5.2%)、宮城県(+4.7%)、北海道(+4.4%)、千葉県(+4.3%)、東京都(+4.1%)と続き、上位6位までが上昇率4%を超えている。
これらを含めて29都道府県で上昇しており、前年より5県増加した。昨年の変動率と比較すると、45都道府県で昨年よりも上昇率が拡大または下落率が縮小している。

住宅地の上昇地点の割合は(表2、図4)、沖縄県が100%と全ての地点が上昇しており、次いで東京都(97.2%)、神奈川県(89.4%)、千葉県(83.4%)等となっており、上昇地点割合が50%以上を占めたのは20都道府県であった。

住宅地の下落率は和歌山県等3県が1.0%以上の下落

住宅地の変動率は、17県が下落となった(表2、図3)。このうち、和歌山県と愛媛県がともに0.7%下落、次いで鹿児島県が0.6%下落となっている。依然として下落している県も、いずれも下落幅は縮小している。

また、秋田県(+0.2%、前年▲0.1%)、三重県(+0.2%、同▲0.2%)、青森県(+0.1%、同▲0.3%)、宮崎県(+0.1%、同▲0.1%)の4県は、下落から上昇に転じた。

住宅地の下落地点の割合は(表2)、愛媛県(74.1%)と和歌山県(71.2%)の2県で70%以上を占めたのをはじめ、15県で下落地点割合が50%以上を占めた。

商業地の上昇率は福岡県が4年連続1位

商業地の地価変動率は(表2)、福岡県が6.7%上昇(前年+5.3%)で4年連続の1位となった。次いで、東京都(+6.3%)、大阪府(+6.0%)、神奈川県(+5.4%)等、8都道府県で5%以上の上昇率となり、これらを含めて29都道府県が上昇となった。

商業地の上昇地点の割合は(表2)、東京都が99.2%で最も高く、次いで沖縄県(98.3%)、大阪府(93.5%)、神奈川県(93.3%)、愛知県(90.5%)と、上位5位までが90%以上となっており、上昇地点割合が50%以上を占めたのは24都道府県であった。

一方15県では依然下落しており、鳥取県の1.3%下落が最も下落率が大きく、次いで新潟県(▲0.9%)、鹿児島県(▲0.8%)、島根県(▲0.7%)等となっているが、これらの県はいずれも、前年と比べて下落率は縮小した。

図3 都道府県別住宅地の対前年平均変動率

令和6年地価公示住宅地の変動率マップ

図4 都道府県別住宅地の上昇地点の割合

令和6年地価公示住宅地の上昇地点割合マップ


表 2 都道府県別・用途別対前年平均変動率

4.市区町村の動向

北海道内の市町で高い上昇率が顕著

住宅地の地価上昇率においては、北海道の市町において高い上昇率が顕著となっている。
三大都市圏の全ての市及び全国の人口10万人以上の市における住宅地の地価変動率の上位を見ると(表3)、北海道の帯広市と江別市がともに11.7%上昇で1位となり、札幌市(+8.4%)も9位となっている。

帯広市は住宅需要が高まっている中で供給が少なく、周辺の幕別町(+12.4%)や芽室町(+9.8%)、音更町(+6.5%)でも住宅地の地価が上昇している。

全国の住宅地の地価上昇率上位100地点を見ても、富良野市が27.9%上昇で1位、千歳市が2位(+23.4%)をはじめ4地点が上位10位内に入り、帯広市が5位(+20.4%)など、北海道内の地点が上位100位内のうち52地点を占めた。

富良野市はスキーリゾート地としての海外からの観光客と投資需要が急増しており、富良野市の住宅地平均でも7%上昇となった。

千歳市は、ラピダス(株)が最先端半導体工場を建設中であり、関連企業の進出を含め、雇用や経済活性化の期待から需要が高まっている。

地方四市では福岡市、札幌市、仙台市で上昇

地方四市の中でも(表3、表4)、特に福岡市の住宅地は9.6%上昇し(前年+8.0%)、⼈⼝増加や福岡都市圏の拡大を背景に引き続き需要が堅調で、特に博多区は14.8%上昇と最も高い上昇率となった。
福岡市に近接する古賀市は、福岡市中心部へのアクセスが良好なうえに割安感もあり、14.2%上昇と福岡市よりも高い上昇率となった。その他、宇美町(+9.3%)、大野城市(+8.7%)、筑紫野市(+8.6%)等の福岡市の近隣市町も高い上昇率となっている。

札幌市も8.4%上昇(+15.0%)と高い上昇率となっており、特に白石区(+10.3%)、豊平区(9.2%)、北区(9.0%)等で高い上昇率となっている。ただし、前年と比べると全ての区で上昇率が縮小しやや落ち着きを見せている。

さらに札幌市の周辺市では、相対的な割安感等から、恵庭市(+14.0%)、江別市(+11.7%)、北広島市(+11.4%)、石狩市(+11.0%)等では、札幌市を上回る高い上昇率となっているものの、こちらも前年と比べると上昇率は縮小した。

仙台市の住宅地は7.0%上昇し(前年+5.9%)、仙台市に近接する富谷市(+9.4%)、大和町(+8.3%)等でも高い上昇率となっている。

東京圏では千葉県内の都心へのアクセスが良い地域で上昇

東京圏の住宅地においては、市川市が10.6%上昇(前年+6.8)と最も高い上昇率となった。次いで、流山市(+10.1%)、浦安市(+9.9%)、柏市(+7.9%)と続き、都心へのアクセスが良く、都心に比べると割安感のあるエリアの需要が高まり、上昇率の上位を占めた。

特別区23区では、豊島区が7.8%上昇(同+4.7%)と最も高く、次いで中央区(+7.5%)、文京区(+7.4%)、目黒区(+7.3%)、港区(+7.2%)等で高い上昇率となっている。

表 3 三大都市圏及び地方圏主要都市の地価変動率(上位50位)(変動率:%、平均価格:円/m²)

(注)集計の対象は、三大都市圏の全ての市及び地方圏の人口10万人以上の市。

表 4 地方四市の区別住宅地変動率と平均地価

5.デフレ脱却と地価上昇

今回の地価公示では、新型コロナウイルス感染症の影響から抜け出し社会経済活動が活発化し、株価や物価、賃金の上昇等も相まって、バブル崩壊以降では最も高い上昇率となった。

今回は、大都市圏における郊外部や地方圏においても、かなり広範囲に地価の上昇傾向が拡がった。バブル崩壊以降、失われた30年の間、地価の下落が続いていたようなエリアにおいても、今回上昇に転じたエリアや地点は多い。依然として下落しているエリアにおいても、下落幅はかなり縮小した。

物価上昇については、令和5年の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比3.1%上昇した。住宅地の地価上昇率は2.0%で物価上昇率を下回り、商業地の地価上昇率は3.1%で並んだ。つまり、全般的な上昇率においては、物価上昇に伴って地価も上昇した状況であり、決してバブル期のような物価上昇率を上回る地価の上昇が起こっているわけではない。

現在のところ、物価や賃金の上昇が一時的なものに終わってしまうのか、持続的な成長となるのか、まさにデフレからの完全脱却の正念場とも言える時期である。そのような状況において、早くも日銀はマイナス金利を解除するなど、これまでの大規模な金融緩和策の変更を決定したこともあり、その影響も含めて、今後の物価や経済動向を注視する必要がある。

一方で、少子高齢化を背景とする人口減少はさらに加速しつつある。住宅地等に対する実需は、一部の人気エリアを除いて全般的には確実に縮小していく。物価上昇率等の経済動向を注視しつつ、それぞれの地域の人口や経済の動向を把握し、宅地需要を見極めていくことが重要である。


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