生産緑地についてありがちな誤解 必ず市は買い取る?

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生産緑地を買取り申し出すれば、買取り申し出すると必ず市に買い取られる?

わかりにくい買取り申し出という仕組み

生産緑地所有者が、営農を継続できなくなったときには、市(市町村長)に対して買取り申し出をします。

地権者としては、生産緑地地区の解除をしたいところですが、まずは買取り申し出をしなくてはなりません。

これは、生産緑地地区の要件として、公共施設等の土地にに適しているという事項があり、当面農地として利用しつつ将来の公共用地としても想定して都市計画決定したものであり、公有地化することを優先しているという制度の建て付けがあるためです。

公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。

生産緑地法3条

市は生産緑地をほぼ買い取らない

生産緑地法には、買取り申し出について、以下のように書いてあります。

市町村長は、第十条の規定による申出があつたときは、次項の規定により買取りの相手方が定められた場合を除き、特別の事情がない限り、当該生産緑地を時価で買い取るものとする

生産緑地法第11条

法律で「特別な事情がない限り、買い取る」とされているのだから、普通に考えて、買取り申し出すれば市が買い取るものだと思うのも当然です。

もちろん、市が買い取ることもできます。でも、実際にこれまで買い取られたことは非常にレアケースで、1%もありません。ですから、ほぼ買い取らないと考えていいでしょう。

市が買い取らない理由

では、なぜ市は買い取らないかというと、時価で買い取ることになっていて、時価、すなわち市街化区域内の宅地として評価した価格になりますから、それなりの予算が必要になります。

買取り申出は、生産緑地所有者が死亡したり、ケガや病気で営農継続できなくなった時ですので、いつ、どのくらい発生するかといった予測は困難です。また、多くの自治体の財政はあまり余裕がありませんので、生産緑地を買い取るためにあらかじめ予算措置などしていません

また、仮に市が土地を買い取るには、何らかの公共事業用地として活用することが原則ですので、あらかじめその計画がある必要があります。

買取り申し出があった場合、市は買い取る、あるいは買い取らない旨を1か月以内に通知することになっていますので、予算措置もない、事業計画もないでは、買い取ることはできません。

ですので、たまたま公共事業用地などの計画があった場所で、予算措置もできる状態にあった場合に、稀に買い取られているということになります。

それでも、法律に「特別な事情がない限り」と書いてあるのですから、買い取らなくてはいけないんではないかと思ってしまいますが、買い取るための予算がない、あるいは事業計画がないといった理由でも、“特別な事情”に該当するとして、この制度は運用されています。

つまり、法律を真面目に読んでしまうと、原則市が買取り、例外的に買い取られないのかと思いきや、実際はその逆で、原則買い取られず、例外的に買い取られることがあるというのが現実です。

市が買い取ると言っても、市に売らなくてもいい

それならば、市が買い取る意向を示したのならば、必ず買い取られるのかというと、そうではありません。

次に、生産緑地所有者と市で価格の協議をするのですが、ここで、市が提示した買取り価格に生産緑地所有者が承諾しなければ、協議不成立となって、市が買い取ることはありません

もちろん、市が生産緑地所有者の希望を満たす額を提示した場合や、後の土地利用を公園などの公共利用を望んだ場合などは、協議が成立し、市が買い取ることとなります。

一方で、立地条件の良い土地の場合は、民間企業等がより高い買取り価格を提示することも多く、住宅用地など民間利用されることが多いようです。

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