日本の将来推計人口(令和5年推計) 総人口は50年後に現在の7割まで減少

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国立社会保障・人口問題研究所は4月26日、令和2年国勢調査の確定値を出発点とする、新たな日本の将来推計人口の結果を公表した。

これによると、前回推計(平成29年)よりも出生率は低下するものの、平均寿命が伸び外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和する見通しとされた。ただし、日本人人口に限定した推計では、人口減少が前回推計より強まる結果となっている。

目次

1.推計方法と仮定値

推計の方法については、国際的に標準とされる人口学的手法に基づき、人口変動要因である出生、死亡および国際人口移動に関連する統計指標の動向を数理モデル等により将来に投影する方法で推計している。

今回は2020年までの実績値をもとに、2020年10月1日現在の男女別年齢各歳別人口(総人口)を基準人口として、2021年から2070年までの人口についての推計を行っている。

(1) 合計特殊出生率は1.36に低下

合計特殊出生率は、新型コロナウイルス感染拡大以前から見られた低迷を反映し、長期的投影水準は、前回推計の1.44(2065年)から1.36(2070年)に低下(中位仮定)すると仮定した。また短期的には新型コロナウイルス感染期における婚姻数減少等の影響を受けて低調に推移するとした(図1)。

図1 合計特殊出生率の推移:出生中位・高位・低位(死亡中位)推計

(注)破線は前回推計。人口動態調査と同定義に基づく合計特殊出生率。長期的には中位に重なる細線は、新型コロナ感染拡大のあった2020~2022年における初婚減、出生減の影響を加味しないモデル値に基づくもの。

(2) 平均寿命は2070年に男性85.89年、女性91.94年に伸長

人口推計には生存率が必要であり、将来の生存率を得るためには将来生命表を作成する必要がある。本推計では、複数のモデルを組み合わせることにより、死亡率改善のめざましい日本の死亡状況に適合させた。また、将来の死亡水準の改善に関する不確実性を考慮し、複数の仮定を与えることによって一定の幅による推計を行っている。

将来生命表に基づく平均寿命については、2020年の男性81.58年、女性87.72年が、2070年には男性85.89年、女性91.94年に伸びる(中位仮定)と仮定した。長期的投影水準は、前回推計(2065年に男性84.95年、女性91.35年)と比較して、わずかに伸びる程度とした(図2)。

図2 平均寿命の推計:死亡中位・高位・低位推計

(注)破線は前回推計。

(3) 国際人口移動は近年の高水準を反映して増加

国際人口移動の動向は、社会経済情勢や出入国管理制度、災害等によって大きく影響される。日本人と外国人の移動は異なる推移傾向を示し、日本人の移動は人口の年齢構造による影響を受けるが、外国人の場合には限定的である。2020年は新型コロナウイルスの影響により大きな変動があったが、新型コロナウイルス感染期を除く近年の水準上昇を反映し、長期的投影水準は、前回推計の年間約6万9千人(2035年)から今回の約16万4千人(2040年)へ増加すると仮定した(図3)。

図3 外国人入国超過率(男女計)

(注)破線は前回推計。外国人入国超過のうち男性の割合:49.8%。

2.日本の将来人口推計結果

(1) 総人口は50年後に現在の7割に減少

総人口は、人口推計の出発点である2020年の国勢調査によれば1億2,615万人であった。出生中位推計の結果に基づけば、これ以後長期の人口減少過程に入ると見られる。2045年の1億880万人を経て、2056年には1億人を割って9,965万人となり、2070年には8,700万人になるものと推計される(図4)。

前回推計と比較すると、2065年時点の総人口は前回の8,808万人から今回9,159万人となる。総人口が1億人を下回る時期は2053年から2056年になり、人口減少の速度はわずかに緩む結果となったが、その主な要因は国際人口移動による部分が大きい

図4 総人口の推移 ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計―

※破線は前回中位集計。

(2) 年齢3区分別人口規模及び構成率の推移ー50年後は2.6人に1人が高齢者に

日本における日本人の出生数は1973年の209万人から2020年の81万人まで大きく減少してきた。その結果、年少人口(0~14歳人口)も1980年代初めの2,700万人規模から2020の1,503万人まで減少した。
出生中位推計の結果によると、年少人口は減少が続き、2053年には1,000万人を割り、2070年には797万人まで減少すると推計される(図5)。

生産年齢人口(15~64歳人口)は、戦後は増加を続けて1995年に8,726万人でピークに達したが、その後減少局面に入り、2020年国勢調査によると7,509万人となっている。
将来の生産年齢人口(出生中位推計)は、2032年、2043年、2062年にはそれぞれ7,000万人、6,000万人、5,000万人を割り、2070年には4,535万人まで減少すると推計される(図5)。

高齢者人口(65歳以上人口)の推移は、2020年現在の3,603万人から、2032年には3,704万人へと増加する。その後は増加の速度があがり、第二次ベビーブーム世代が65歳以上人口に入った後の2043年に3,953万人でピークを迎えた後は減少に転じ、2070年には3,367万人となると推計される(図5)。

高齢者人口の総人口に占める割合(高齢化率)を見ると、2020年現在の28.6%、すなわち3.5人に1人が65歳以上から、出生中位推計では、2038年に33.9%と3人に1人の水準に達し、2070年には38.7%、すなわち2.6人に1人が高齢者となると推計される。
高齢化率は、2065年時点で比較すると前回推計と変わらず38.4%。高齢者数のピークについては、前回は2042年の3,935万人、今回は2043年の3,953万人と、1年先延ばしとなった(図6)。


図5 年齢3区分別人口の推移 ―出生中位(死亡中位)推計―

(注)破線は前回中位推計。

図 6 年齢3区分別人口割合の推移 ―出生中位(死亡中位)推計―

(注)破線は前回中位推計。

(3) 人口ピラミッドの変化

日本の人口ピラミッドは過去の出生数の急増減を反映しており、2020年には第1次ベビーブーム世代が70歳代前半、第2次ベビーブーム世代が40歳代後半に位置している(図7(1))。

出生中位推計によってその後の形状の変化を見ると、2045年に第1次ベビーブーム世代は90歳代の後半、第2次ベビーブーム世代は70歳代前半となる。したがって、2045年頃までの人口高齢化は第1次ベビーブーム世代に引き続き第2次ベビーブーム世代が高年齢層に入ることによるものである(図7(2))。

その後、2070年までの高齢化の進展は、低い出生率の下で世代ごとに人口規模が縮小して行くことを反映したものとなっている(図7(3))。

図7 人口ピラミッドの変化(総人口) ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計―

3.日本人人口に限定した場合の参考推計ー人口減少の進行は強まる

今回の将来推計人口において、人口減少の進行がわずかに前回推計より緩和と推計された主な要因は、仮定値に用いた外国人の入国超過増である。そこで、日本人人口に限定した参考推計(出生中位・死亡中位推計)を見ると(図8)、2070年の日本人人口は7,761万人となり、外国人を含む総人口より939万人少なく、前回推計と比べても人口減少の進行は強まっている

また、年齢3区分別の人口割合の推移を見ても、2070年の年少人口及び生産年齢人口割合はいずれも前回推計よりも下振れし、高齢者人口割合は上振れしている(図9)。

図8 日本人人口の推移 ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計―

(注)実線は今回推計、破線は前回推計。

図9 日本人人口年齢3区分別人口割合の推移 ―出生中位(死亡中位)推計―

(注)破線は前回中位推計。

4.将来推計人口の見方の注意点と少子化対策

本稿では、将来人口の推計結果について、主に中位推計を紹介したが、上位と低位推計の結果も公表されているので、併せて見てほしい。

また、将来推計人口を見るにあたって、推計結果の数値だけを見るのではなく、どのようなデータを使い、どのような仮定のもとで推計されたのかが、より重要である。

まず、推計の基礎となるデータについては、2020年の「国勢調査」及び2021年の「出生動向基本調査」(本来2020年に実施予定だったがコロナ禍のため1年延期)がコロナ禍で実施されたものであることが挙げられる。

日本の場合新型コロナ感染症は、死亡率にはほとんど影響がなかったが、初婚数と出生数の低下に大きな影響を与えたとされる。そこで、今回の推計における出生率は、この影響を加味して仮定値が設定されているとされるものの、コロナ禍の影響の有無による差を算出することは容易ではない。

ちなみに、出生率について、今回その中位仮定値を前回より下げて1.36に設定したが、すでに公表されている2021年の合計特殊出生率は1.30と、仮定値よりも低い値となっている。

また、コロナ禍は、国際人口移動にも大きなブレーキをかけた。したがって、今回の推計では、コロナ禍以前の近年の水準上昇を反映した仮定値を採用したとされる。

以上のように、特に今回は難しい条件下で行われた推計であり、その結果については振れ幅が大きいものと見ておいた方がよいだろう。ただ、振れ幅が大きいとしても、将来的に人口が大幅に減少する見通しであることに変わりは無い。

政府としてもこのことを踏まえ、「異次元の少子化対策」として、子育て世代への経済的支援や社会的支援を大幅に強化する方針を打ち出しており、少子化の流れが変わることを期待したいところではある。

一方で、財源確保等の課題もあり、少子化対策の各施策の実施をどこまで強化できるのか、さらに仮に各施策を実施して社会の環境を整えたとしても、個人の意思に基づく結婚と出産の増加にどれほど効果をもたらすことができるのか等の疑問は依然として大きく、将来の見通しについて容易には楽観視できない非常に難しい問題である。

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