令和6年の新設住宅着工戸数は79万2千戸で前年比3.4%減少し、2年連続の減少となりました。 利用関係別では、分譲一戸建住宅が前年比11.7%減少するなど全ての利用関係で減少しましたが、貸家は0.5%の微減にとどまりました。 大都市圏別では、首都圏と近畿圏が増加し、中部圏は減少しました。 地方別では、沖縄や北海道で貸家が増加し、四国や中国地方で大幅に減少しました。 住宅市場全体は縮小傾向にあり、特に分譲戸建ての落ち込みが顕著ですが、貸家は比較的底堅く推移しています。 今後の市場動向を把握するためには、需給バランス全体を総合的に評価することが重要です。
住宅着工数が2年連続で減少!背景にある要因とは?
国土交通省が1月31日に発表した令和6年の新設住宅着工戸数のデータによると、総戸数は79万2千戸で、前年比3.4%減となりました。これは2年連続の減少となり、日本の住宅市場の縮小傾向を示しています。
特に、一戸建ての分譲住宅は前年比11.7%減と大きく落ち込みました。一方で、貸家は0.5%減とわずかな減少にとどまっています。
では、なぜ住宅着工数が減少しているのでしょうか?主な要因として以下が挙げられます。
- 人口減少・世帯数の減少:日本全体の人口減少が住宅需要を低下させています。
- 住宅価格の上昇:材料費や人件費の高騰により、新築住宅の価格が上昇し、多くの人が購入をためらうようになっています。
- 金利上昇の懸念:住宅ローンの金利上昇を見越して、新築住宅の購入を控える人が増加。特に低金利時代が続いていた日本では、わずかな金利上昇でも消費者心理に大きな影響を与えます。
- ライフスタイルの変化:若い世代を中心に、持ち家志向よりも賃貸志向が強まっています。これは、仕事やライフスタイルの柔軟性を重視する傾向が影響しています。
《新設住宅着工戸数の推移(総戸数、利用関係別)》

《利用関係別新設住宅着工戸数の推移》

大都市圏の動向:近畿圏の貸家は回復傾向
地域別に見ると、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)、中部圏(愛知・岐阜・静岡など)、近畿圏(大阪・京都・兵庫など)で着工数が減少しています。
《大都市圏別新設住宅着工戸数の推移》

しかし、貸家の動向に注目すると、近畿圏ではコロナ禍前の水準に回復し、前年比4.2%増となりました。これは、大阪や京都などでの賃貸需要の高まりが影響していると考えられます。一方で、中部圏の貸家は前年比3.5%減となり、地域によって異なる動きが見られます。
貸家の増加が見られる近畿圏では、大阪市内や神戸の再開発が進んでいることも影響しています。オフィスや商業施設の整備が進み、居住ニーズが高まっていることが要因として挙げられます。
《大都市圏別新設住宅着工戸数(貸家)の推移》

地方の住宅着工数:沖縄・北海道の貸家は増加
地方別に見ると、住宅着工数は全体的に減少傾向にありますが、貸家に関しては沖縄(+17.8%)、北海道(+10.2%)で増加しました。
特に沖縄では、海外からの投資需要の回復が影響していると考えられます。コロナ禍で一時的に落ち込んでいた観光業も回復し、それに伴い住宅需要も増えていることが背景にあります。一方で、四国地方(▲19.3%)や北陸地方(▲14.2%)では貸家の着工数が大幅に減少しました。
《地方別新設住宅着工数の推移(総戸数)(平成28年=100)》

地方の住宅市場は、地域ごとの経済状況や人口動態に大きく影響を受けます。例えば、北海道では都市部への人口流入が続いており、札幌市を中心に住宅需要が増えています。これに対し、四国地方では若者の都市流出が続き、新築住宅の需要が低迷しているのです。
《地方別新設住宅着工戸数の推移(貸家)(平成28年=100)》

貸家は徳島県、長崎県、香川県で大幅増(都道府県別)
都道府県別に総戸数の前年比を見ると、京都府が18.3%増と最も高く、次いで、大分県(+8.5%)、宮城県(+6.2%)などが続いています。一方、長崎県(▲21.3%)、三重県(▲16.0%)、高知県(▲15.6%)、愛媛県(▲15.3%)の4県は15%以上の減少となりました。
令和6年計着工新設住宅戸数前年比(総戸数・都道府県別)

貸家については、鳥取県の前年比46.5%増を筆頭に、山形県(+31.1%)、京都府(+24.8%)、群馬県(24.0%)の4県が20%を超える高い増加率となりました。一方、福井県(▲37.4%)、秋田県(▲34.4%)、三重県(▲30.5%)、愛媛県(▲29.6%)など、9県が20%以上の減少となりました。
令和6年計着工新設住宅戸数前年比(貸家・都道府県別)

住宅市場の縮小でも貸家は安定!その理由とは?
住宅市場全体は縮小傾向にありますが、貸家市場は比較的安定しています。その理由として、以下の点が挙げられます。
- 住宅価格の上昇:マイホームの取得が難しくなり、持ち家を諦めて、結果として賃貸が増加。
- ライフスタイルの変化:転職や単身世帯の増加により、持ち家ではなく賃貸を選ぶ人が増えている。
- 投資需要の増加:不動産投資の対象として貸家が注目され、新規供給が一定数維持されている。
- 都市部の再開発:地方都市では住宅着工数が減少しているものの、東京や大阪などの都市部では新しい賃貸住宅の供給が活発。
また、働き方の変化も貸家市場の安定に寄与しています。テレワークが普及し、都心部の通勤圏外に住む人が増える中、賃貸住宅へのニーズが高まっているのです。
まとめ:今後の住宅市場の展望
令和6年の住宅着工数は、2年連続で減少しました。特に、分譲住宅の落ち込みが大きく、住宅市場の縮小が顕著になっています。しかし、その一方で貸家市場は比較的安定しており、地域によっては着工数が増加しているケースも見られます。
今後の住宅市場を考える上では、新築住宅の供給状況だけでなく、中古住宅の流通や賃貸市場の動向も重要です。今後の住宅市場の動きに注目しながら、賢く住まい選びをしていきましょう!
今後も、住宅市場のトレンドや最新のデータをもとに、より分かりやすくお伝えしていきます。住宅購入を考えている方、賃貸を検討している方も、ぜひ定期的にチェックしてみてください。
《令和6年計着工新設住宅戸数:利用関係別・都道府県別表》(単位:戸,%)

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