高齢農業者のリタイヤによって、農業者の減少に拍車がかかる中、意欲ある後継者が、農業経営を発展させ、地域の農業を担っていけるよう、JA等が計画的に準備と円滑な事業承継を支援することが重要となっています。
JAと農家との信頼関係を構築し、農業の経営継承と資産の相続の両者を連携して、計画と対策を立てることが重要です。
さらに、その計画と対策をもとに、着実な相続・事業承継を進めるよう、フォローも大切です。
事業承継の手引き
JA全中より、弊社代表畠が執筆する「事業承継の手引き」を、家族経営版を平成28年より、法人経営版を平成29年より発行し、毎年更新しています。
この手引きは、主に経営移譲や農地等経営資産の承継にかかる手続き等について、その流れと具体的な手続き方法等についてとりまとめたものです。
最新版は、令和4年版(令和4年12月発行)となります。その概要は以下に掲載しています。
次世代総点検運動
農業の担い手は、高齢化の進行に伴い世代交代が進む中で、後継者不足により農業従事者数の大幅な減少傾向が継続しており、地方も都市部も同様の課題を抱えている。一方、食料安保の観点からあらためて食料自給率の向上の重要性が再認識される中で、それに応えるためのそれぞれの産地での農業生産の拡大と、それを支えるJAの事業量を維持・拡大させるため、次世代の地域農業の担い手を確保していくことが喫緊の課題となっている。
JAグループは、第29回JA全国大会決議において、担い手の年齢構造や後継者等の状況等を総点検し、確保すべき次世代の組合員数などの目標を設定し、事業承継等の個別支援や新規就農者の育成・定着を支援することで、次世代の担い手を確保する取り組みを「次世代総点検運動」と位置づけ、重
点的に取り組むとしている。
都市農業における次世代総点検運動の意義
都市部においては、食料自給率に占めるウェイトは大きくはないものの、大消費地内にある地産地消の役割を担い続けるために農地と農産物生産の維持が課題となる。さらに、都市部特有の課題として、農地にかかる重い税負担や宅地化圧力、さらに営農環境等の問題もあり、都市農業を維持していくことは容易ではない。あらためて、貴重な都市農地を維持し、将来にわたって持続可能な都市農業経営の確立が急がれる。
特に、三大都市圏特定市においては、2022年に全体の約8割を占める当初指定の生産緑地が、指定から30年を迎え、このうち約9割が特定生産緑地に移行見込みとなった。懸念されていた2022年問題の影響を最小限にとどめることはできたものの、農業後継者不足及び重い相続税負担による農地の減少といった問題は依然として残り、地方圏では多くが生産緑地制度未導入のために、市街化区域農地の固定資産税負担と農地減少といった、都市農業特有の課題に対応していく必要がある。
とりわけ都市JAにおいて、農地及び正組合員の減少は、JAの存在意義を揺るがしかねない。都市農地を維持し、次世代の都市農業の担い手及び正組合員を確保していくことが喫緊の課題である。