令和4年都道府県地価調査が公表ー全国平均で住宅地・商業地ともに上昇に転じる
国土交通省は9月20日、各都道府県による令和4年都道府県地価調査(基準地価、令和4年7月1日時点)について、全国の状況をとりまとめて公表した。
これによると、社会経済活動の正常化が進む中で、新型コロナウイルス感染症の影響等により弱含んでいた住宅・店舗等の需要は回復傾向にあり、全国平均で住宅地・商業地ともに上昇に転じた。
住宅地は、平成3年以来31年ぶりに上昇に転じ、長期の低金利とコロナ禍による生活様式の変化等により、都市近郊のマイホーム需要が喚起されたと見られる。
1.全国
全国平均で住宅地・商業地ともに上昇に転じる
新型コロナウイルス感染症の影響等で滞っていた社会経済活動がようやく正常化へと進むにつれ、地価にもその影響が現れた。全国平均では、住宅地と商業地ともに上昇に転じ、商業地は0.5%上昇(前年▲0.5%)し、コロナ禍前の令和元年以来3年ぶりに上昇、住宅地は0.1%上昇し(前年▲0.5%)バブル崩壊の局面にあった平成3年以来、実に31年ぶりの上昇となった。
変動別地点割合も、住宅地は上昇地点が34.9%で13ポイント増加し、下落地点が48.1%で7.3ポイント減少となった。商業地は上昇地点が40.7%で19.1ポイント増加し、下落地点が42.1%で12.8ポイント減少となった。
図1 全国の変動率の推移(住宅地・商業地)
表1 圏域・地方別対前年平均変動率・変動別地点割合
2.三大都市圏
■住宅地は名古屋圏と東京圏が上昇に転じる
住宅地について、三大都市圏の変動率は、前年の横ばいから1.0%上昇となった(表1)。
圏域別に見ると、名古屋圏の変動率は1.6%上昇(前年+0.3%)と、三大都市圏で最も高い上昇率となった。東京圏は1.2%上昇(同+0.1%)と上昇幅を拡大し、大阪圏は前年の0.3%下落から0.4%上昇へと転じた。
表1 圏域・地方別対前年平均変動率・変動別地点割合
名古屋圏では、名古屋市で3.1%上昇と、名古屋市中心部のマンション開発需要が堅調なのに対して、開発素地の供給が少ないことから地価が上昇し、さらに隣接する東海市で5.6%上昇と県内1位の上昇率となっている。
西三河地域は、自動車産業をはじめとする地域経済が順調に推移し、雇用も安定していることから住宅需要が拡大し、刈谷市で5.6%上昇、安城市で4.6%上昇等地価が上昇している。
東京圏では、都心5区で3.1%上昇し、23区全体でも2.2%上昇したほか、郊外部では茨城県のつくばエクスプレス沿線の守谷市(+2.9%)やつくばみらい市(+2.6%)、神奈川県の湘南エリアの茅ヶ崎市(+2.5%)等において高い上昇率となった。
■商業地は名古屋圏が上昇に転じる
三大都市圏の商業地の変動率は、1.9%上昇(前年+0.1%)と、住宅地以上に回復傾向が見られた。
名古屋圏の変動率は2.3%上昇(同+1.0%)と、同様三大都市圏で最も高い上昇率となった。東京圏も2.0%上昇(同+0.1%)し、大阪圏は昨年の0.6%下落から1.5%上昇へと転じた。
名古屋圏は、名古屋市東区の6.3%上昇をはじめとして、名古屋市全体で4.4%上昇となった。西三河地域の安城市(+4.5%)や刈谷市(+4.1%)は商業地でも高い上昇率となった。もともとインバウンド需要への依存度が比較的低いこともあり、社会経済活動が正常化する中で地価も上昇基調となった。
東京圏は、23区全体で2.2%上昇しているものの、都心5区は1.0%の上昇にとどまり、その他の杉並区(+3.8%)や北区(+3.7%)等で高い上昇率となった。
大阪圏は、大阪市が梅田地区のオフィス需要等から1.7%上昇と持ち直し、京都市も観光需要の回復等から、2.5%上昇となった。
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3.地方圏
■地方四市は上昇幅縮小も上昇を維持
地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)は、住宅地6.6%上昇、商業地6.9%上昇と、ともに高い上昇率で回復基調が顕著となった(表1・表3)。
地方四市の中で住宅地については、札幌市が11.8%上昇(前年+7.4%)と最も高い上昇幅となっており、次いで福岡市6.5%上昇(同+4.4%)、仙台市5.9%上昇(同+3.6%)、広島市1.2%上昇(同+0.7%)の順となっている。
商業地では、福岡市が9.6%上昇(同+7.7%)と最も高い上昇率となっており、次いで札幌市7.8%上昇(同+4.2%)、仙台市5.7%上昇(同+3.7%)、広島市3.2%上昇(同+1.7%)の順となっている。いずれの商業地でも、駅前再開発等の大規模開発による需要増が地価を押し上げている主要な要因となっている。
■北海道、九州・沖縄地方の住宅地が上昇
地方圏では、住宅地は0.2%下落(前年▲0.7%)、商業地は0.1%下落(同▲0.7%)となり、ともに依然下落となったものの、下落幅はわずかとなった。(表1)。
地方別(三大都市圏を含まない)に見ると、住宅地については北海道地方が1.8%上昇(同+0.3)、九州・沖縄地方が0.7%上昇(同+0.1%)となった。商業地でも北海道地方と九州・沖縄地方がともに0.8%上昇し、他の地方は住宅地、商業地ともに下落となった。
■四国地方の住宅地下落地点割合が8割以上
地方別に住宅地の変動別地点割合をみると(表1)、四国地方の上昇地点はわずか3.5%で、下落が84.6%を占め、他の地方と比べても特に下落地点割合が高い。
四国4県の下落地点割合を見ると(表2)、愛媛県が88.0%で最も高く、次いで徳島県(86.9%)、香川県(82.0%)、高知県(78.7%)と、全国上位5県のうち4県が四国地方となっている。
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■沖縄県の住宅地が7年連続で全国1位の上昇率
都道府県別に見ると、沖縄県の住宅地の変動率が2.7%上昇(前年+1.6%)と8年連続で上昇、7年連続で全国1位となった。昨年は大幅に上昇幅が縮小したが、今年は上昇幅が拡大した(図2、表2)。
那覇市の住宅地は1.1%上昇したが、相対的に割安感のある周辺市町村、与那原町(+4.0%)、南城市(+3.5%)、宜野湾市(+3.5%)等でより高い上昇率となった。
また、宮古島市で住宅地が10.9%上昇と県内で最も高い上昇率となった。観光業の回復が見込まれることから、観光従事者や市外からの移住者、開発従事者等の住宅需要の高まっている。
その他住宅地では、西原町(+6.2%)、石垣市(+5.6%)、北中城村(+5.5%)、八重瀬町(+5.1%)等で高い上昇率となった。
■福岡県はコロナ前を上回る上昇率
福岡県の住宅地の変動率は、2.5%上昇となり(前年+1.5%)、コロナ前(令和元年度)の上昇率を上回り、昨年に続き全国2位となった。また、商業地は4.0%上昇(同+2.7%)で昨年に続き全国1位となった。
福岡市の住宅地では、博多区の10.4%上昇をはじめとして、福岡市全体で6.5%上昇した。再開発等により生活利便性が向上し、割安感があったエリアの地価上昇が顕著で、さらに希少性が高い高級住宅地でも地価が上昇している。
福岡市への通勤圏内にある、須惠町(+10.6%)、筑紫野市(+8.0%)、小郡市(+7.3%)、大野城市(+7.2%)等においても地価が上昇している。特に須惠町は、福岡市への交通利便性が高く、宅地開発が盛んに行われており、一次取得者を中心に需要は旺盛で、県内市町で唯一上昇率が10%を超えた。
注文住宅の相談窓口■北海道は札幌市近郊等で上昇
北海道の住宅地の変動率は、1.8%上昇し(前年+0.3%)、上昇幅が拡大し単独で全国3位となった(前年は3道県が同率3位)。
札幌市は11.8%上昇となったが、それ以上に札幌市に隣接する北広島市の24.8%上昇をはじめ、恵庭市(+24.0%)、江別市(+21.7%)、千歳市(21.6%)が、20%以上の非常に高い上昇率となった。
特に北広島市は、来年3月にプロ野球北海道日本ハムの本拠地となる新球場を中心とした複合開発「ボールパークFビレッジ」が開業する予定で、その効果から全国の住宅地の上昇率の上位3位までを北広島市の地点が独占した。
また、帯広市でも9.8%上昇と高い上昇率となった。道東の中心都市として事業所等の集積と人口集積が進む中で住宅需要が増大する一方で、大規模な農業地帯でもあり、住宅地の供給が限られることも相まって地価が上昇している。
■上昇地点の割合は東京都が全国1位
都道府県別の住宅地の上昇地点の割合を見ると(図3、表2)、東京都が82.1%で全国1位となった。次いで、沖縄県(72.0%)、愛知県(68.3%)、福岡県(62.0%)の順となっている。
一方、下落地点の割合を見ると、沖縄県が3.1%で最も少なく、次いで東京都が4.7%と、この2都県のみが10%未満となっており、両県は全体が上昇傾向となっている。
■13県が依然として1%以上の下落
住宅地の変動率が下落したのは、22府県、うち13県が1.0%以上の下落と、依然下落傾向が続いている(表2)。
最も下落率が大きかったのが愛媛県で1.5%下落、次いで、鹿児島県が1.3%下落、福井県、山梨県、岐阜県、徳島県の4県が同じく1.2%下落となっている。
これらの県の中でも、鹿児島市では九州新線終着駅の鹿児島中央駅周辺等、福井市では北陸新幹線の延伸開業を控える福井駅周辺等、一部には新幹線効果による地価上昇も見られる。