令和元年都道府県地価調査公表

国土交通省は9月19日、令和元年都道府県地価調査(令和元年7月1日時点)の結果を公表した。

これによると、全国平均では商業地や工業地において、三大都市圏では全用途で、上昇基調を強めており、三大都市圏以外の地方圏でも商業地が平成3年以来28年ぶりに上昇に転じるなど、全国的に地価の回復傾向が広がっているとしている。

全国平均の全用途平均が2年連続上昇、地方圏でも商業地が28年ぶりの上昇に転じる

全国平均では、全用途平均が2年連続の上昇となり、上昇幅も拡大しており上昇基調を強めている。用途別では、住宅地は下落幅の縮小傾向が継続しており、商業地は3年連続、工業地は2年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めている。

三大都市圏をみると、全用途平均、住宅地・商業地・工業地のいずれの用途でも、各圏域において上昇が継続し、上昇基調を強めている。

地方圏をみると、商業地が平成3年以来28年ぶりに上昇、工業地も平成4年以来27年ぶりに上昇に転じた。全用途平均・住宅地は下落幅の縮小傾向が継続している。地方圏のうち、地方四市では、いずれの用途でも上昇が継続し、上昇基調を強めている。地方四市を除くその他の地域においては、全用途平均・住宅地・商業地は下落幅の縮小傾向が継続しており、工業地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じた。

地方圏では地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)や沖縄県が高い上昇率で牽引しており、その他は依然下落傾向にある地方が多い。

《圏域・地方別対前年平均変動率・変動別地点割合》

三大都市圏では各圏域とも上昇を継続

三大都市圏では、全用途平均、住宅地・商業地・工業地のいずれの用途でも、各圏域において上昇が継続し、上昇基調を強めている。

圏域別にみると、東京圏では、住宅地の平均変動率は1.1%と6年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大している。商業地の平均変動率は4.9%と7年連続の上昇となり、上昇幅も6年連続で拡大している。

大阪圏では、住宅地の平均変動率は0.3%と2年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。商業地の平均変動率は6.8%と7年連続の上昇となり、上昇幅も6年連続で拡大している。

名古屋圏では、住宅地の平均変動率は1.0%と7年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大している。商業地の平均変動率は3.8%と7年連続の上昇となり、上昇幅も6年連続で拡大している。

地方四市は三大都市圏を上回る高い上昇率をさらに拡大

地方中核都市の札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市は、住宅地、商業地ともに三大都市圏を大きく上回る上昇率を示し、四市いずれも昨年と比べてさらに拡大した。

 地方四市の中で、住宅地では札幌市が6.1%上昇と最も高い上昇率となっており、昨年の3.9%上昇から2.2ポイントも拡大した。次いで仙台市(6.0%上昇)、福岡市(5.3%上昇)、広島市(2.2%上昇)の順で、いずれも上昇率は拡大した。

 商業地では、福岡市が12.8%上昇と最も高い上昇率となっており、次いで札幌市(11.0%)、仙台市(10.5%上昇)、広島市(5.7%上昇)の順となっている。

 地方四市は、広域都市圏の中心都市として成長を続けており、特に商業地の上昇率が高く、地価上昇を牽引している。

九州・沖縄地方が0.7%上昇と地方で最も上昇

地方圏を地方別(三大都市圏を含まない)に見ると、住宅地では九州・沖縄地方が0.7%上昇で、地方の中で唯一の上昇となった。

  商業地でも九州・沖縄地方は2.0%上昇と、地方の中では最も上昇率が高く、北海道地方、中国地方、関東地方以外の他の地方は依然下落となっている。

九州・沖縄地方の内訳をみると、沖縄県(住宅地6.3%上昇、商業地12.0%)と、福岡県(住宅地1.7%上昇、商業地4.0%)の2県が牽引していることがわかる。

住宅地の8割以上が下落している県が5県

地方圏においても、地方四市や沖縄県等では上昇傾向が強まっている一方で、その他の地域では、高齢化と人口減少の進行という構造的な問題を背景として下落傾向が続いている。

それでも、下落幅の縮小や、下落地点の減少傾向が認められ、住宅地の下落地点の割合が80%以上の県は、昨年の7県から5県(愛媛県、山梨県、秋田県、和歌山県、三重県)に減り、住宅地の上昇地点が1つも無い県はなくなった(昨年1県)。

商業地でも、下落地点の割合が80%以上の県は、昨年の4県から2県(高知県、山梨県)に減りった。

国土交通省が公表した資料においては、地方圏の商業地が28年ぶりに上昇したことを受けて、“全国的に地価の回復傾向が広がっている”としているものの、地方四市や沖縄県や福岡県が上昇を牽引しており、これらを除く地方の住宅地の多くにまで、回復傾向が広がっているとは、まだ言えない状況にある。

《都道府県別・用途別対前年平均変動率》

(資料)国土交通省「令和元年都道府県地価調査」