少子化をめぐる出生・婚姻の動向と地域比較

少子化は改善するどころか、晩婚化、晩産化、非婚化が進み人口減少は危機的な状況に

我が国の少子高齢化を背景とする人口減少が課題であることは言われて久しいが、ここに来てあらためて、国や自治体の政策として少子化対策が盛んに取り上げられるようになっている。これも、以前から言われていたにもかかわらず、改善するどころか出生率の低下はさらに進み、その背景として晩婚化と晩産化、さらには非婚化が進行しており、危機感が高まっている。

本稿では、これらに関するデータについての過去からの推移と、都道府県別の現状の比較について整理した。これを見ると、日本の人口減少問題は、特に50年、100年という長期的な時間軸で捉えた時に、あらためて非常に危機的な状況にあることを認識させられる。

都道府県別に見ると、少子化及び晩産化、晩婚化、非婚化といずれも東京都をはじめとする大都市圏ほど人口の再生産力が低い傾向がある。ただし、大都市圏は比較的若い人を中心に移動による流入人口が多いために、結果的に地方ほど少子高齢化と人口減少は深刻である。

1.出生数と出生率の減少

(1) 全国の出生数と普通出生率の推移

人口動態調査によると、2021年の出生数は811,622人であり,前年(2020年)に比べて3万人近く減少した。出生数は第二次ベビーブームの1973年の209万人をピークに減少が続き、1990年代や2000年代半ばに若干持ち直した時期もあったが、2011年以降は再び減りはじめ、16年は戦後初めて100万人を下回り、21年は81万人と、戦後最少を更新し続けている。

また、人口千人当たりの出生数である“普通出生率”もほぼ同様の傾向を示し、1973年の19.4‰から多少の変動はあるものの減少傾向が続き、91年には10‰を下回り、2008年以降は上昇に転じることなく、21年は6.6‰となり戦後最低を更新し続けている(図1)。

《図 1 出生数と普通出世率の推移》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

(2) 全国の合計特殊出生率の推移

1人の女性が一生の間に子供を産む数である“合計特殊出生率”の推移をみると(図2)、第二次ベビーブームが始まった1971年が2.16だったが、75年には1.91と2を割り込み、81年には1.74まで低下した。その後若干持ち直した年もあるものの、概ね低下傾向が続き、93年には1.46と1.5を割り込み、2005年には1.26と最少を記録した。その後15年には1.45まで持ち直したが、再び低下傾向となり、21年は1.30となっている。

人口を維持するための死亡率も加味した“人口置換水準”は、2021年では2.07となっている。
この出生率1.3が続くとどうなるかというと、あくまでも計算上だが、60年後の2080年頃には人口は半減し、110年後の2030年頃には1/4にまで減少してしまう(注1)。まさに将来日本が消滅しかねないほどの危険な水準であり、さらにこれまでの趨勢を考えると、出生率がさらに下振れして、人口減少がさらに早まる可能性もある。

出生率に係る国の目標として、“希望出生率”というものがある。これは、少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」に基づき、若い世代における結婚と子供の数に関する希望がかなうとした場合に想定される出生率で、2015年にこの目標を「1.8」とし、国はこの実現に向けて政策を講じて来た。

しかし、この希望出生率1.8が仮に実現したとしても、人口減少を止めることはできない数値であり、この目標を掲げた2015年の出生率が1.45であったから、2021年時点でさらに0.15低下したことになる。

《図 2 合計特殊出生率の推移》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

(注1)国立社会保障・人口問題研究所『人口問題研究』第78巻第4号(2022年12月刊)「全国人口の再生産に関する主要指標:2021」。

(3) 都道府県別出生率の比較

普通出生率について都道府県別に上位から見ると(図3、表1)、沖縄県が10.03と突出しており、2位以下は僅差で、福岡県(7.44)、愛知県(7.426)、鹿児島県(7.424)、熊本県(7.40)、滋賀県(7.35)が続いている。

一方下位を見ると、秋田県が4.6と唯一5を下回り、次いで青森県(5.36)、岩手県(5.44)、北海道(5.59)、山形県(5.63)、新潟県(5.83)と続き、北海道・東北地方が下位を占めている。

合計特殊出生率について上位を見ると(図4、表1)、同じく沖縄県が1.80で最も高く、国が掲げる希望出生率を唯一達成しているが、それでも県内の再生産だけでは人口を維持できない水準である。
2位以下は、鹿児島県(1.65)、宮崎県(1.64)、島根県(1.62)、長崎県(1.60)が続いている。

一方下位は、東京都が1.08で最も低く、次いで宮城県(1.15)、北海道(1.20)、千葉県(1.21)、秋田県(1.22)などとなっている。

このように、普通出生率と合計特殊出生率とで、全般的な傾向は似かよりつつも必ずしも相関しない。これは、出産年齢の女性が多いか否かが影響するため、東京都をはじめとしてその年齢層が集まる大都市を抱える県は、合計特殊出生率が低くても、普通出生率は比較的高くなる。

また、都道府県別の分布図を見ても明らかなように、出生率においては“南高北低”の傾向が顕著に見られる。

《図 3 都道府県別普通出生率》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

《図 4 都道府県別合計特殊出生率》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

2.晩産化と晩婚化

(1) 全国の母親の出産年齢の推移

出生率の低下要因の1つとして、出生時の母親の年齢の高齢化、“晩産化”が挙げられる。特に第1子の出産年齢が高齢化することで、第2子以降を出産せずに、1子のみとなる確率が高まる。

1971年から2020年までの出生時の母親の平均年齢の推移を見ると(図5)、1975年には27.4歳だったが、それ以降上昇を続け、2003年には30歳となり、21年には32.2歳にまで上昇した。
特に第1子の出生時について見ると、1970年には25.6歳だったが、2011年には30歳を超え、21年には30.9歳にまで上昇した。1970年から2021年までの間、総数では4.7歳、第1子では5.3歳上昇した。

《図 5 出生時の母親の平均年齢の推移》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

(2) 全国の初婚年齢の推移

晩産化の大きな要因として、晩婚化の進行が挙げられる。妻の初婚平均年齢の推移を見ると(図6)、1972年に24.2歳だったが、その後上昇を続け、77年に25歳を超え、2000年に27歳、11年には29歳となり、19年に29.6歳となった。その後わずかに下がり21年は29.5歳となっている。

夫と妻両方上昇しているが、1971年から2021年の間に、妻は5.2歳上昇し、夫の4.2歳上昇を上回っている。

《図 6 平均初婚年齢の推移》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

(3) 都道府県別の晩産化・晩婚化

都道府県別に、第1子出生時の母親の平均年齢を、若い順から見ると(図7、表1)、山口県が29.7歳で最も若く、次いで和歌山県と宮崎県が29.8歳、岩手県と岡山県が29.9歳と僅差で続いており、上位5位までが20歳台となっている。

一方、平均年齢が高い順から見ると、東京都が32.4歳で最も高く、次いで神奈川県(31.5歳)、千葉県と京都府が31.1歳、埼玉県と兵庫県が30.9歳で続き、大都市圏内の都府県が上位を占め、晩産化が進んでいる。

また、妻の初婚年齢について若い順から見ると(図8、表1)、山口県と和歌山県がともに28.7歳で最も若く、次いで岡山県と鳥取県が28.8歳となっている。

一方、初婚年齢が高い順から見ると、東京都が30.5歳で最も高く、2位の神奈川県が30.0歳と上位2位までが30歳以上となっており、次いで京都府と千葉県が29.7歳、埼玉県と高知県が29.6歳で続いている。

妻の初婚年齢と第1子出生時の年齢については相関性が高く、都道府県別に見ても両者の順位は概ね同様の傾向となっている。

《図 7 都道府県別第1子出生時の母親の平均年齢》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

《図 8 都道府県別初婚年齢(妻)》

(資料)厚生労働省「2021年人口動態調査」を基に作成。

3.非婚化

(1) 全国の未婚率の推移

晩婚化以上に近年顕著な動きとして、結婚しない人の割合“未婚率”(50歳時の未婚率)が急激に上昇していることであり、少子化に拍車を掛けている(図9)。1980年頃までは、男女とも未婚率は5%未満で、結婚することが当たり前とされていた時代だったと言えよう。

ところが、90年頃から未婚率の上昇が始まり、少子化の関係で言うと女性の未婚率が2005年には10%を超え、20年には17.8%まで上昇した。
さらに男性の未婚率の上昇はより顕著で、1990年から2005年にかけて急上昇して20%を超え、20年には28.3%と3割に迫る勢いである。

価値観の多様化により、自ら結婚しないことを選択する人が増えていることや、経済的理由として結婚しない、あるいは出来ないといったこと等が要因として言われている。

21年の出生動向基本調査(注2)によると、未婚女性の14.6%が「一生結婚するつもりはない」と回答しており、前回(15年調査)の8.0%から大幅に上昇した。
また、結婚意思のある25歳~34歳の未婚女性の「独身でいる理由」については、「適当な相手にまだめぐり会わないから」が48.1%で最多であり、これは以前から変わらない。

(注2)(国立社会保障・人口問題研究所)『第16回 出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)』、「独身者調査」、2022年9月公表、2021年6月調査実施。

《図 9 全国の50歳時未婚率の推移》

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」、総務省「国勢調査」を基に作成。

(2) 都道府県別未婚率の比較

都道府県別に女性の50歳時の未婚率を低い順に見ると(図10、表1)、福井県が12.1%で最も低く、次いで滋賀県(12.8%)、岐阜県(13.2%)、山形県(13.5%)、三重県(13.6%)などとなっており、いずれも地方圏となっている。

一方、未婚率が高い順では、東京都が23.8%で1位最も高く、次いで高知県(21.1%)、大阪府(20.6%)、北海道(20.4%)、京都府(20.1%)と続き、上位5位までが20%を超えている。

全般的には大都市圏の未婚率が高い傾向があるものの、高知県や北海道、沖縄県(19.3%、7位)等の地方でも未婚率の高い道県がある。特に沖縄県は未婚率が高いにもかかわらず、普通出生率及び合計特殊出生率がともに1位と、特異な特徴が見られる。

《図 10 都道府県別50歳時未婚率(女性)》

(資料)総務省「2020年国勢調査」を基に作成。

《表 1 都道府県別出生・婚姻に係る主な指標》