不動産価格指数に見る住宅価格の動向
(国土交通省「不動産価格指数」)
国土交通省は11月28日、不動産価格指数(住宅)の2018年8月分及び第2四半期分について公表した。
不動産価格指数(住宅)とは、住宅・マンション等の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別に毎月の不動産価格について、2010年平均を100として指数化したものである。毎月、取引月から約3ヶ月後に公表されるため、比較的早い段階で市場の動きを見ることが出来る。
指数化の対象は、「住宅地」、「戸建住宅」、「マンション」、及びこれらを総合した「住宅総合」である。また、全国、都市圏、地方ブロック別に集計がなされている。
これらの推移を見ると、全般的な傾向としては、「住宅地」と「戸建住宅」がほぼ横ばいであるのに対し、「マンション」だけが大幅な上昇傾向が続いている状況にあり、マンション価格の高騰が価格指数でも明確となっている。
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1.全国の不動産価格指数(住宅)の推移:マンションが牽引し45ヶ月連続上昇
2018年8月分における全国の不動産価格指数の「住宅総合」は、前年同月比2.2%上昇して111.9となり、45ヶ月連続の前年同月比上昇となった(図1)。
住宅の各指数の推移を見ると、2012年末頃までは、いずれも概ね横ばいであったが、2013年に入ると、株価の上昇に見られるように景気が回復基調となり、さらに震災後の復興需要等による建築費の高騰等の影響を受けて、「マンション」の価格が上昇を始め、その後も上昇を続けて現在に至る。2018年8月の指数は142.2にまで上昇し、前年同月比も4.6%上昇となった。
その一方で、「住宅地」及び「戸建住宅」は、さほど景気回復や株価上昇の影響は認められず、小幅の上下動を繰り返しながら、全体としては依然として横ばいを続けている。2018年8月の指数は住宅地が101.4、戸建住宅が101.2、対前年同月比は住宅地が2.1%上昇、戸建住宅が0.3%下落となっている。
少子高齢化によって人口の減少傾向が強まる中、全般的な住宅需要は弱まっているものの、マンションが牽引する形で住宅価格は上昇傾向を続けている。マンションの都心回帰によって、比較的地価の高い立地における供給が増えていることや、マンション用地の地価上昇、建築資材や人件費の上昇による建築費高騰等と相まって、強い上昇傾向を生んでいると見られる。
ただし、首都圏の地価上昇や建築費の高騰は、2020年開催予定の東京オリンピックを要因とする特需とも言われており、オリンピック後の住宅価格の下落も懸念されている。
<全国の不動産価格指数(住宅)の推移>
2.都市圏別不動産価格指数(住宅)の推移
都市圏別の不動産価格指数「住宅地」の推移を見ると(図2)、南関東圏と京阪神圏はやや上昇傾向にあり、名古屋圏はやや下落傾向にある。2018年8月の指数は、京阪神圏が108.8と最も高く、名古屋圏が今回下落し91.3と100を下回った(表1)。
「戸建住宅」の指数の推移を見ると(図3)、いずれの都市圏も、概ね95~105の間で変動幅の少ない推移をしており、全体的にはわずかに上昇傾向が認められる。2018年8月の指数は、南関東圏が104.6と最も高く、名古屋圏が96.8と100を下回った(表1)。
一方、「マンション」の推移を見ると(図4)、いずれの都市圏も2013年初頭から上昇傾向が継続している。2018年8月の指数は、京阪神圏が143.5と最も高く、南関東圏は138.1と三大都市圏の中では最も低い値となっている(表1)。
3.ブロック別不動産価格指数(住宅)の推移
地方ブロック別に見ると(図5・図6)、東北地方は、震災以降の復興需要等を背景として、いずれの指数も高い水準で推移してきた。2018年8月の指数も「住宅地」は114.2、「戸建住宅」は115.6と地方ブロック別に見て最も高い値となった。ただし、「戸建住宅」はここ1年ほど沈静化してきている(表2)。
また、「マンション」は(図7)、これまで他ブロックと比べても高い水準で推移してきたが、ここ1年ほどは、東北地方の価格上昇が鈍化し、他の地方ブロックが追い付き、あるいは追い抜いた形で、2018年8月の指数は175.7で3位となった。代わりに九州・沖縄地方が183.0で1位、北海道が182.2で2位となった(表2)。
一方で、中部地方は2018年8月の住宅総合が97.4と、地方ブロックの中で唯一100を下回っており、特に「住宅地」は90.1と低い(表2)。