平成29年分の相続税の申告状況が公表される

(国税庁「平成29年分の相続税の申告状況について」)

国税庁はこのほど、平成29年分の相続税の申告状況を公表した。それによると、被相続人数(死亡者数)は約134万人(前年約130万8千人)、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約11万2千人(前年約10万6千人)で、課税割合(全ての被相続人のうち、相続税の課税対象となった人の割合)は8.3%(前年8.1%)となり、前年を上回り過去最高を更新した。

課税対象被相続人数が約11万2千人と過去最多を更新

高齢者人口が増え続ける中で、被相続人数も増加を続けており(図1)、過去10年間で約23万人増加(年平均1.9%増加)しており、今回も前年より約3万3千人の増加(前年比3.3%増加)となった(平成28年分:1,307,748人→平成29年分1,340,397人)。

また、課税対象となる被相続人数については、平成11年以降の減少傾向から、平成16年以降は増加に転じ、一昨年は平成25年度税制改正の基礎控除の引き下げ等によって課税対象者が拡大され、一気に前年比83.2%も増加して10万人の大台を突破した。そして昨年、今年と引き続き増加し111,728人と過去最多を更新した。今年は大きな影響を及ぼす税制改正が無い中で、被相続人数が前年比3.3%の増加に対して、課税対象相続人数は前年比5.8%と高い増加率を示した。

図1 被相続人数の推移
資料)国税庁「平成29年分の相続税の申告の状況について(平成30年12月)」及び、国税庁「長期時系列データ・相続税」より作成。

課税割合も8.3%で過去最多を更新

相続税の課税割合(被相続人数に対する課税対象被相続人数の割合)は今回8.3%(前年8.1%)となり、前年より0.2ポイント増加し、こちらも過去最高を更新した。

過去の推移を見ると、バブル期のピーク時の平成3年においても課税割合は6.8%であり、平成元年以降課税割合が6%を超えたのは、平成3年から平成5年までの3年間のみだった。

平成25年度税制改正によって課税強化され、以降バブル期を大きく上回る8%台となり、今年はさらに増加した。

図2 課税割合の推移
資料)国税庁「平成29年分の相続税の申告の状況について(平成30年12月)」及び、国税庁「長期時系列データ・相続税」より作成。

相続財産に占める土地の割合は36.5%

課税価格と税額はともに、税制改正後の平成27年大幅に増加し、平成29年課税価格は前年比5.5%増、税額は前年比8.1%増と、制度改正が無い中で昨年以上の大きな増加となった(図3)。

 相続財産の金額の構成は(図4)、土地が36.5%、現金・預貯金等31.7%、有価証券15.2%の順となっている。バブル期のピーク時の平成4年には土地が実に75.9%を占めていたが、その後年々その割合は小さくなり、過去50年間を見ても平成27年初めて40%を割り込み、平成29年はさらに小さくなった。一方で現金・預貯金等が増加し、構成比は今回31.7%となった。

ただし、JA組合員に限って言えば、土地資産の割合が依然として極めて大きいことは言うまでもない。バブル崩壊後の地価と相続税評価は下落を続けてきたが、全国的には地価は上昇傾向に転じており、大都市圏の条件の良いエリアなど、立地条件によっては、今後相続時の評価額も上昇する可能性もある。したがって、相続に備えるにあたっても、今後の地価の予想によって講ずべき対策が異なることに留意する必要がある。

図3 相続税の課税価格及び税額の推移
(注)「課税価格」は、相続財産価格から、被相続人の債務・葬式費用を控除し、相続開始3年以内の被相続人から相続人等への生前贈与財産価格及び相続時精算課税適用財産価格を加えたもの。
(資料)国税庁「平成29年分の相続税の申告の状況について(平成30年12月)」及び、国税庁「長期時系列データ・相続税」より作成。
図4 相続財産の金額の構成比の推移
資料)国税庁「平成29年分の相続税の申告の状況について(平成30年12月)」及び、国税庁「長期時系列データ・相続税」より作成。

地域別課税割合と土地割合

国税局管内別に課税割合と相続財産に占める土地の割合等について見ると、かなり地域によって特徴が異なっている。

課税割合については(表1、図5)、東京国税局管内が13.2%(昨年12.8%)、名古屋国税局が11.0%(昨年11.0%)と、特に高い水準となっている。一方、熊本国税局管内は3.7%(昨年3.6%)、次いで札幌国税局4.2%(昨年3.9%)、仙台国税局4.1%(昨年4.0%)と比較的低い水準にとどまっており、地域によって大きな開きがある。

 相続財産に占める土地の割合については(図6)、特に沖縄県では63.3%(昨年63.0%)と非常に高い割合を占めている。次いで、関東信越国税局40.8%(昨年43.6%)、名古屋国税局40.4%(昨年40.9%)、東京国税局41.2%(昨年40.1%)などとなっているが、いずれも昨年より減少した。

一方、札幌国税局管内の北海道が18.7%(昨年20.4%)と最も割合が小さく、次いで広島国税局27.8%(昨年29.7%)となっている。

今回の結果においては、沖縄国税局を除いて、課税割合はいずれも増加し、土地割合はいずれも減少した。

表 1 国税局別国税局別課税割合
図5 国税局別課税割合
図6 国税局別相続財産に占める土地の割合

(注)各国税局の管轄都道府県は以下のとおり。

  • 札幌国税局:北海道
  • 仙台国税局:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
  • 関東信越国税局:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、長野県
  • 東京国税局:千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
  • 金沢国税局:富山県、石川県、福井県
  • 名古屋国税局:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
  • 大阪国税局:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
  • 広島国税局:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
  • 高松国税局:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
  • 福岡国税局:福岡県、佐賀県、長崎県
  • 熊本国税局:熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
  • 沖縄国税事務所:沖縄県