体験型農園「讃さんファーム」/JA香川県
JA香川県では、平成31年3月、JA直営の体験型農園「讃さんファーム」をオープンした。平成28年度からの「第5次中期経営計画」及び「地域活性化プラン」の中で、農業協同組合活動への理解促進のための取組みとして「農業とふれ合う場の提供」を掲げており、その1つとして体験型農園を開設し、部門横断的な体制を敷いてその運営に取り組んでいる。
農園の概要
香川県の海岸線側ほぼ中央部に位置する丸亀市の郊外、讃岐富士と呼ばれる飯野山の南側、ファーマーズマーケット「讃さん広場」の隣接地に、体験型農園「讃さんファーム」がある。
1区画20m²の個人区画54区画と共同区画を用意し、約10台分の専用駐車場や農具倉庫と講習室を兼ねるビニールハウスとプレハブの事務所を整備した。
種苗や肥料、農具等は全て農園で用意し、作付計画に基づき、年間12回の栽培講習会等での指導を受けながら、個人区画では12種類程度の野菜の栽培と収穫を体験できる。その他共同区画では約10種類もの野菜を栽培し、交流イベントも開催され、利用料金は年間5万円(税抜)となっている。
「讃さんファーム」の概要
開設・運営主体 | JA香川県 |
開設時期 | 平成31年3月(3月2日開園式) |
方式 | 特定農地貸付 |
区画面積 | 個人区画:1区画20m²、他に共同区画あり |
区画数 | 募集区画数:54区画、うち利用区画26区画(令和元年9月末現在) |
利用料金 | 50,000円/年(税抜) |
駐車場 | 専用駐車場:約10台分 |
施設・設備 | ビニールハウス(農具庫・講習室)、プレハブ事務所(トイレは讃さん広場のものを利用) |
栽培品目 | 個人区画:13品目(令和元年度) ・春夏: ミニトマト、キュウリ、ナス、オクラ、エダマメ、ジャガイモ ・秋冬:ブロッコリー、ハクサイ、レタス、ホウレンソウ、ダイコン、カブ、ニンジン 共同区画:約10品目(共同区画及び空区画で栽培) |
栽培講習会 | 回数:年間12回開催(各2回、延べ24回開催) 開催日:主に火曜日と土曜日 |
栽培指導 | 毎週火曜日と土曜日の午前中にインストラクターが相談等に対応 |
イベント | 春の親睦会、秋の収穫祭 |
年間13品目と共同区画での多様な品目の栽培体験
初年度の個人区画での栽培品目数は、春夏期が6品目、秋冬期が7品目で、年間13品目となっている。利用者の作業の様子や収穫量を見る限り、このくらいの品目数が適当とJAではみている。ただし、キュウリなど一部の品目では、果実の穫れすぎや収穫期を逃しがちなどの問題がある。
また、元々駐車場に隣接した区画を共同区画として用意していたが、それに加えて初年度は、利用者が全区画の半分程度にとどまったことで生じた空き区画も利用して、約10品目もの野菜を共同区画として栽培している。今後空き区画が無くなるようになれば、共同区画での栽培は減ることになる。
共同区画での植え付け作業は、利用者も参加して一緒に行っている。収穫物については、栽培講習回等の際にプレゼントとして利用者に提供している。
利用者からは、想像以上にたくさん収穫できることや、特に枝豆やスイートコーンの獲れたては甘さが違う、などといった喜びの声があり、大変好評を得ている。
専門的かつわかりやすい栽培指導
栽培講習会での講師等インストラクターを務める担当者は、営農部園芸課の職員で、日頃から営農指導や育苗等を担当しており、ファーマーズマーケットの出荷者を対象とした多様な品目の栽培講習会も担当している。したがって、多品目の野菜の栽培に精通しており、講習会等で人に教えることにも非常に慣れている。取材した当日の栽培講習会でも、専門的知識に基づいて、しかも素人にもわかりやすい解説と指導をしていた。
講師を務める担当者が、栽培講習会の無い日も、週に2回火曜日と土曜日の午前中、農園に来て共同区画の栽培管理やその他農園の管理作業をしながら、来園している利用者の質問対応や栽培指導を行っている。
1区画1畝方式を採用
個人区画は1m×9mの1つの畝に、連続して複数の作目を作付けする方式を採用している。練馬区農業体験農園に倣って多くの体験型農園では、1区画に複数の短い畝を水平に並べ、畝ごとに1または2種類の作目を作付ける方式が一般的だが、讃さんファームでは検討の結果1畝方式を採用した。
その理由の1つは、この農地はもともと水田のために粘土質で水捌けが悪いため、高畝にする必要があること。素人が鍬で上手に畝立てするのは難しいと判断し、前期と後期が始まる前に、機械で畝立てと通路作りをすることとし、そのためにはこの方式の方が作業しやすい。
その他のメリットとしては、畝の長さ9mの中で、作目ごとの長さを自由に設定できるため、株数を調整しやすい。また、簡単に正しい株間となるよう、播種や植え付け作業の際には、あらかじめ植え付け位置に印を付けたロープを用意し、各自位置を確認しながら作業している。
また、支柱の必要な作目を並べて作付けすることで、使用する支柱の本数を少なくすることもできる。また、畝間の通路の除草等の管理も効率的にできる。
一方で、利用者自身が畝立て作業をしないことや、畝ごとに栽培期間を変えるなどの自由度が低いことが、この方式の課題とも言える。
(注)JA全中「JAまちづくり資産管理情報」2019年11月号掲載記事より、一部省略しています。