地方圏の生産緑地制度 導入の勧め(7)共同検討会を開く(1)
行政、市民の理解重要
JA全中では2020年度、「地方圏における生産緑地制度の導入促進に向けた共同検討会」を設置した。地方圏のJAと県中央会が参加し、20年8月から21年の3月にかけて、4回にわたり検討会を開催した。
検討会では、生産緑地制度に関する基本的な知識を整理した上で、広島市などの先行する取り組み事例を共有しつつ課題を把握。各県・各JAにおける効果的な進め方を検討した。成果として取りまとめた制度導入の進め方のうち、前半の準備と市町村への働き掛けについて、その概略を紹介する。
制度導入に取り組むに当たり、①市町村(市町村長・議会・担当部局)の理解・納得、②要請内容の正当性の整理、③取り組みへの賛同者の確保ーが重要だとした。
制度導入の要請が単なる税金の減免要請として受け止められてしまうと、行政や一般市民からの賛同を得られない。そうならないために、生産緑地制度の導入が、地域の農業振興と良好な町づくりにつながるという考え方を基本に据え、まず市街化区域の農地と農業の現状について、基礎データや優良事例などから把握し、課題を整理することで、要請内容に正当性と説得力を持たせることが重要となる。
そして、要請がごく一部の人のためのものではないことを示すために、取り組みへの賛同者を確保することが重要だ。まず、制度導入に意欲的な中心となる農業者と連携し、農家向け学習会などを通して「制度導入されれば生産緑地の指定を受けたい」とする賛同者を増やし、アンケートなどによる数量的なデータも用意する。
さらに、取り組みの後押しとなる農業団体、有識者、メディアなどへの働き掛けによって広く賛同者を集めて影響力を拡大していく。
こうして準備した理解と納得の得られる制度導入の要請を、賛同者からの後押しも得て、市町村に働き掛ける。その際に極力対立は避け、さらに行政課題の解決にも応えることが、制度導入を近づけることとなる。
(日本農業新聞 2021年5月19日掲載)