令和2年度度道府県地価調査/国土交通省

国土交通省は9月29日、令和2年都道府県地価調査(令和2元年7月1日時点)の結果を公表した。
これによると、大都市圏をはじめとして全国的に新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まり、全国平均で住宅地が0.7%下落、商業地が0.3%下落となり、近年上昇基調が続いていた三大都市圏でも住宅地が7年ぶりに下落に転じた。
調査時点の7月以降も感染が一時期拡大するなど、今なお収束の見通しは立っていないことから、依然として先行きは不透明なままであり、不動産市場の停滞と地価の下落が懸念される。

全国平均で全用途平均が3年ぶりに下落

全国平均では、全用途平均は平成29年以来3年ぶりに下落に転じた。用途別では、住宅地は下落幅が拡大し(▲0.1→▲0.7)、商業地は平成27年以来5年ぶりに下落に転じた(+1.7→▲0.3)。
変動別地点割合も、住宅地は上昇が18.8%(前年28.8%)、下落が63.0%(同51.8%)となり、10%以上の変動があった。商業地は上昇が27.5%(同42.8%)、下落が55.5%(同40.5%)となり、15%以上の変動があった。

表1 圏域・地方別対前年平均変動率・変動別地点割合

三大都市圏はコロナ禍の影響を最も受けて住宅地は全て下落に

近年の地価の上昇を牽引してきた三大都市圏では、今年1月1日時点の地価公示で見たように、昨年後半までは順調に上昇基調を継続してきたが、今年2月以降感染が拡がった新型コロナウイルスの影響を最も受けた格好となった(表1)。
三大都市圏では、全用途平均は平成25年以来7年連続上昇を続けていたが横ばいとなり、住宅地は平成25年以来7年ぶりに下落に転じ(+0.9→▲0.3)、商業地・工業地は上昇を継続したが上昇幅が縮小した。
圏域別にみると、東京圏の平均変動率は、住宅地は▲0.2%(前年+1.1)と下落に転じ、商業地は1.0%(同+4.9%)と上昇を維持したが上昇幅は大幅に縮小した。
大阪圏の平均変動率は、住宅地は▲0.4%(同+0.3%)と下落に転じ、商業地は1.2%(同+6.8)と7年連続の上昇となったが上昇幅は三大都市圏の商業地中で最も大幅な縮小となった。
名古屋圏の平均変動率は、住宅地は▲0.7%(同+1.0)と下落に転じ、商業地は▲1.1%(同+3.8%)と三大都市圏の中で唯一下落となった。

地方四市は上昇幅縮小も上昇を維持

地方中核都市の札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市は、住宅地、商業地ともに上昇幅は縮小したものの、上昇を維持した(表3)。
 地方四市の中で、住宅地では札幌市が6.1%上昇と最も高い上昇率となっており、昨年と比べても同率を維持た。次いで仙台市3.7%上昇(前年+6.0%)、福岡市3.5%上昇(同+5.3%)、広島市0.8%上昇(同+2.2%)の順で、札幌市以外の上昇幅は縮小した。
 商業地では、福岡市が7.5%上昇(同+12.8%)と最も高い上昇率となっており、次いで仙台市6.9%上昇(同+10.5%)、札幌市6.6%上昇(同+11.0%)、広島市2.8%(同+5.7%)上昇の順となっている。

九州・沖縄地方が0.1%上昇と地方で唯一の上昇

地方圏でも、全用途平均・住宅地は下落幅が拡大し、商業地は平成30年以来2年ぶりに上昇から下落に転じた(+1.7→▲0.6)(図1、表2)。
 地方圏を地方別(三大都市圏を含まない)に見ると、住宅地では九州・沖縄地方が0.1%上昇(前年+0.7%)で、前年より上昇幅は縮小したものの、地方の中で唯一上昇を維持した。
 商業地でも九州・沖縄地方は0.5%上昇(同+2.0%)と、ことらも地方の中で唯一上昇を維持した。
九州・沖縄地方の内訳をみると、沖縄県(住宅地+4.0%、商業地+6.2%)と、福岡県(住宅地0.8%上昇、商業地+2.1%)の2県が主に牽引していると言える。また、住宅地では大分県が0.1%上昇(前年+0.1%)、商業地では熊本県が0.1%上昇(同+1.7%)と上昇を維持し、その他の県は下落となった。

図1 都道府県別住宅地の対前年変動率
図2 都道府県別住宅地の下落地点の割合
表2 都道府県別・用途別対前年平均変動率

沖縄県が5年連続で全国1位の上昇率を維持

都道府県別に見ると、沖縄県は住宅地の変動率が7年続けて上昇となり、上昇率もコロナ禍にあっても+4.0%(前年+6.3%)と高い水準を維持し、2位の福岡県(+0.8%)を大きく引き離し、5年連続で全国1位の上昇率となった(図1、表2)。

住宅地の上昇地点の割合も74.6%(前年78.0%)を占め、2位の東京都(47.0%)を大きく引き離し2年連続の全国1位となった。

また、商業地の上昇率でも6.2%上昇(同+12.0)と高い水準を維持し、2位の宮城県(+3.0%)に大きな差を付けて、こちらも2年連続全国1位となった。

沖縄県でも、インバウンドを含めた観光客が大幅に減少するなど、新型コロナウイルスの不動産市場に与えた影響は大きいと見られるが、今回の地価を見る限りは、依然として高い上昇率を維持している。むしろ近年の突出した地価上昇は、バブルとも思われる異常な上昇率だったことから、数字だけ見れば今回の結果はある程度落ち着きを見せたという見方もある。

しかし、調査時点以降の8月には県独自の緊急事態宣言が発せられるなど、その後の新型コロナウイルスの影響の拡大も予想され、近年の急激な地価上昇の反動の懸念も含めて、動向を見守る必要がある。

住宅地の8割以上が下落した県が13県に拡大

地方圏においても、三大都市圏ほどではないものの、新型コロナウイルスの影響を受けて下落傾向が強まった。もともと、高齢化と人口減少の進行という構造的な問題を背景として下落傾向が続いていた中で、コロナ禍がさらにそれを押し下げた格好だ。
住宅地の下落地点の割合が80%以上の県は、前年の5県から13県に拡大し、住宅地の上昇地点が1つも無い県は、前年のゼロから鳥取県1県が該当することとなった(図2、表2)。

商業地でも、下落地点の割合が80%以上の県は、昨年の2県から7県に拡大した。商業地の上昇地点が1つも無い県は、前年のゼロから5県となった。

今回の新型コロナウイルス感染症の地価への影響は、特に三大都市圏の地価を押し下げたため、結果的には大都市圏と地方圏との差が縮まったものの、昨年まで緩やかに回復してきたものが、再び数年前に戻った形となった。

(注)月刊誌「JAまちづくり資産管理情報」10月号の記事のうち、一部省略しています。